「食品だらけ」のドラッグストア、その勝算と難点 大手同士の「国盗り合戦」は新たなステージへ

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Q:ドラッグストア業界で再編が進む理由は?

2023年のドラッグストアチェーンの総売上高は9兆2022億円で、前年から5%拡大しました。今後も高齢化の中で、調剤やヘルスケア用品の需要が一段と高まっていくとみられます。都市部ではインバウンドの伸びを受け、医薬品や化粧品の販売も拡大しています。

とはいえ、人口減少下の日本において、ドラッグストアは増えすぎているのではないか?という点が業界の課題となっています。

過去20年間でドラッグストアの総店舗数は6割増えた一方、企業数は同じ期間でどんどん減っている。客の奪い合いが加速する中で、大手が地方の中小チェーンを飲み込んでいった経緯があります。

さらにここ数年は、大手同士のM&Aにフェーズが移ってきた印象です。例えば2024年2月、業界首位のウエルシアHD、2位のツルハHDが経営統合に向けた協議を開始し、大きな話題となりました。まさに巨大チェーン同士の”国盗り合戦”が加速しているというわけです。

Q:「食品強化型」のドラッグが増える理由は?

近年は食品カテゴリーの品ぞろえを強化し、近隣のスーパーマーケットから客を奪って成長するドラッグストアの姿が目立つようになりました。例えば、北陸地盤のクスリのアオキ。同社のチラシを見てみると、表面の大半は食品の特売情報で埋め尽くされています。

ドラッグストアは医薬品や化粧品で利益を確保できるため、食品の価格を下げて集客することができるのです。

直近では、肉や野菜といった生鮮食品にまで手を伸ばす企業が増えてきました。生鮮食品は温度管理が難しく、廃棄が大量に出てしまうリスクがあるため、ノウハウのないドラッグストアには扱いが難しいとされてきました。そこでクスリのアオキはここ数年、地場スーパーなど12回のM&Aを実施。これにより買収先のノウハウや流通網を吸収し、既存店にも続々と導入していったのです。

この戦略が当たり、クスリのアオキを訪れる客の数は伸長。売上高は右肩上がりに成長しています。

同じく北陸を地盤とするゲンキーは、精肉や総菜加工のための自前センターを構え、サンドイッチや寿司まで展開するという、特徴的な店舗づくりを行っています。

このように食品を軸に拡大を続けているドラッグストアですが、売り上げに占める食品の割合があまりに高くなりすぎると、医薬品やヘルスケア用品を取り扱う専門業態としてのイメージが崩れてしまうのではないか、という懸念も業界全体にくすぶっています。

今後も収益性や専門性を守りながら、いかに規模の拡大を続けられるか。その点が各社の命運を分けそうです。

▼出演記者の最新記事はこちら
https://toyokeizai.net/list/author/伊藤 退助

東洋経済の動画シリーズ「Q Five」では、産業、企業、経済、政治などの注目テーマを「5つのクエスチョン」で掘り下げます。
「Q:ウエルシアとツルハ、合併のインパクトは?」「Q:勢いを増すコスモス薬品は実際何がすごい?」などを含むフルバージョンは動画でご覧いただけます。

※動画内のデータや肩書は収録時点(2024年6月上旬)のものです。

動画内写真:今井康一、梅谷秀司

伊藤 退助 東洋経済 記者

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いとう たいすけ / Taisuke Ito

日用品業界を担当し、ドラッグストアを真剣な面持ちで歩き回っている。大学時代にはドイツのケルン大学に留学、ドイツ関係のアルバイトも。趣味は水泳と音楽鑑賞。

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