それから5年ほど経ち、時代は大きく変わります。企業の人間でありながらも個人として情報を発信することが許された私は、2009年12月にTwitter(現X)アカウントを開設しました。
これは企業アカウントでも、エステー社員としてのアカウントでもなく、鹿毛康司個人のアカウントでした。
2024年7月時点のフォロワー数は1万6000人とそれほど多くはありませんが、フォロワーさんたちとはとても深い関係性を築けていると自負しています。このアカウントを通じて、たくさんの人と出会いました。
西川貴教と出会うきっかけ
消臭力のCMでおなじみとなった西川貴教さんと出会ったのも、Twitter(現X)がきっかけでした。
ポルトガル出身のミゲル少年が、ポルトガルの街並みを背景にアカペラで歌う消臭力のテレビCMが放送されたのは、2011年4月のことです。私は視聴者の反応が気になり、ずっとTwitter(現X)のタイムラインを眺めていました。
通常、企業の商品CMについてつぶやかれるのは、1日数十件程度。ところが、このときは1日に数千件ものつぶやきがタイムラインにあふれていました。そんななか、西川貴教さんが消臭力CMについてツイートしてくれたことを知りました。複数の西川さんファンがリツイートし、教えてくれたのです。
後日、西川さんのコンサートに足を運び、楽屋でご挨拶させていただきました。テレビCMの話は一切せず、これまでのコンサートの話など世間話をする中で、驚くべきことを知ります。
西川さんは震災直後からアーティスト仲間と共に、自ら進んで復興支援活動に勤しまれていました。混乱した状況下でファンと仲間を気遣い、大量の情報をさばき、前向きなアクションをとり続けるのは容易なことではありません。
そんな方にテレビCMに出ていただけたら、なんて素敵なことだろうか。
西川さんとなら、広告主と出演者という関係ではなく、人間同士として一緒に何かを創り、新しいものを生み出していけるに違いないと確信にも似た思いで胸が熱くなりました。
その後、西川さんにテレビCM出演を快諾いただき、現在に至ります。
2004年にエステーのCM作りに携わるようになって以来、2011年まで有名人の方に出演していただくことはほぼありませんでした。人気を借りて、商品やサービスに魅力があるようには見せたくなかったからです。
事情を知らない方が見れば、「エステーも有名人の力を借りているじゃないか」と映るかもしれません。
でも、西川さんとの関係は「広告会社からリストアップされた有名人にオファーし、契約金を払って出演してもらう」という一般的な出演交渉とはまったく異なる、“ご縁”によるものでした。
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