JR芸備線の閑散区間「東城駅」実際どんなところ? 輸送密度13人だが、なぜか外国人観光客もいる
それでも庄原市では、市の予算で東城駅舎の維持管理を行っている。市役所地域交通課に話を聞いたところ、駅舎の維持管理については「必要に応じて駅舎の修繕などの経費を市の予算として計上している」そうで、駅窓口での切符の販売についても「市がJR西日本との契約に基づいて市内の事業者に乗車券類の販売業務を委託している」ということだった。さらに庄原市全体の取り組みとしては、2020年から継続的にイベントの実施やパーク&ライドの社会実験など芸備線の利用促進に関する取り組みを継続的に実施しており、庄原市は芸備線の活性化についてできることを積み重ねている印象を受けた。
沿線自治体では、過去には芸備線の改善に向けて抜本的な取り組みを行おうとしたこともあった。さかのぼること1991年11月、当時の沿線7市町で作る芸備線対策協議会では、芸備線の高速化に向けて、当時の最新式振り子式特急型車両であるJR四国の2000系気動車を借り受けて広島―三次―東城間で試運転が行われた。特に広島―三次間では当時の急行列車よりも11分早い59分で運行できることがわかり、三次市では「芸備線が高速化できれば広島市まで通勤圏内となり経済効果が生まれる」と期待の声が上がることとなった。こうしたことから、沿線自治体で車両を購入しJRにリースする案などが検討されたというが、当時を知る関係者は「JRが拒否したことにより実現には至らなかった」と悔しさをにじませる。
こうしてJR西日本は芸備線を放置し続けた結果、2000年頃と比較して運行本数は激減し所要時間も延びたことから、一定の人口集積がある東城の住民にとっては使いようのない交通手段となってしまった。人口7000人弱の東城から人口2万6000人の新見市に向かう芸備線の東城―備中神代間の2021年の輸送密度は80人で、2019~2021年の営業係数は3858と発表されているが、沿線の人口規模が同程度の鳥取県の若桜鉄道では輸送密度が344人と、国鉄改革で第三セクター鉄道に移管された路線のほうがJR路線よりも乗客の減り幅が小さく赤字額も少ないという実態がある。
鉄道網全体で利益の最大化を目指すべき
3月26日に開催された再構築協議会では、「大量輸送という鉄道としての特性を発揮できていない」というJR側の主張と「鉄道は地域に欠かせない」とする自治体側の主張が対立する形となった。しかし、JR側の主張については、これまでの高速化提案の拒否や減便減速による利便性の悪化を進めた経緯から、特に備後落合―東城間については経営努力を放棄してその結果、輸送密度が減少したと言わざるを得ない面がある。
JR西日本は利益の最大化を図りたいがゆえにローカル線の切り捨てを行いたいというのが一般的な見方である。しかし、一部の路線を切り出して不採算路線として切り捨てるのではなく、むしろ潜在需要を掘り起こして都市部の住民を新幹線や特急列車を使ってローカル線に誘導するような観光施策を打ったほうが、鉄道網全体としての利益の最大化を図れるのではないだろうか。
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