元3セク社長が指摘「赤字ローカル鉄道の処方箋」 「日本鉄道マーケティング」の山田氏に聞く
――1500円?
列車の行先表示板の作成費用です。直通しているJR鳥取駅で出発式をやりたいとJRに打診したら、「ちょうどその日は駅前活性化のためのイベントをやっていてタレントさんも来ているから、その人に出発合図をしてもらおう」という話になり、今度は県庁に電話して、「若桜谷を活性化する観光列車の出発式で、タレントさんが出発合図をしてくれるのですが、知事はテープカットに来てくれますか」と聞いたら「行きます」と。そして、町に電話して「知事がテープカットするのですが町長は来ますか」と。知事と町長がテープカットするという絵ができたので、テレビ局も取材に来て無料で宣伝ができました。
翌年はSL走行社会実験をやって全国的な話題となり、その年に作られた町の地方創生総合戦略に「鉄道を核とした魅力づくり」という方針が盛り込まれ、新しい観光車両と増発への設備投資がされることになりました。
近江鉄道「全線無料」のインパクト
――若桜鉄道の後は?
公募社長をやって思ったのは、自分は選挙で選ばれたわけでもないし、行政組織がバックにいるわけでもなく、この仕事を個人でやるのは限界があるということでした。そこで、岡山県を中心に各地で交通・運輸関連の事業を行っている両備ホールディングスに入り、同社系列の津エアポートラインを担当しました。最初はマーケティング担当でしたが、その後オペレーション全般を見ることになりました。
――その後、西武鉄道グループの近江鉄道に移りました。
近江鉄道の沿線は工業地帯で人口は50万人もおられ、若桜鉄道とは状況がまったく異なりました。近江鉄道では地域との連携を重視し、駅の掃除や動画作りなどを地域の方々と行うみらいファクトリーを実施していました。
また、法定協議会が開催した沿線活動団体を集めたフォーラムで多様な団体が各地で活動していることがわかり、「同じ日に同時多発でやってみたらどうか?」というアイデアが出て、その日に近江鉄道もありがとうフェスタを開催し、近江鉄道線を無料にして回遊してもらおうとなりました。こうして2022年10月16日に「全線無料デイ」が開催され、沿線の各駅でたくさんの連携イベントが行われました。
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