元3セク社長が指摘「赤字ローカル鉄道の処方箋」 「日本鉄道マーケティング」の山田氏に聞く

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――第3セクター鉄道なら社長や幹部社員には行政出身者もいるが、それでも意思疎通が難しい?

山田和昭氏略歴写真
やまだ・かずあき⚫︎1963年東京生まれ、早稲田大学理工学部卒。1987年からIT業界でシステム開発営業やマーケティングに従事。2012年に由利高原鉄道のITアドバイザーに就任、その実績を元に2013年に地域鉄道の業務支援を行う合同会社日本鉄道マーケティングを設立。その後、若桜鉄道、津エアポートライン、近江鉄道を経て、2024年から日本鉄道マーケティングの業務を再開(記者撮影)

確かに3セクの社長は行政出身者が多いですが、現場の状況を理解し説明するのが難しい。そして、「こうなんですよ」と説明しても、「それは我慢してください」で終わってしまうことも多いのです。

本来は地域の利便性を高めて、地域の経済を回すために鉄道というインフラがあるはずなのですが、運輸収入が減少すると行政は鉄道を維持存続させる負担を減らしたいがために経費を減らす。そうすると鉄道の利便性が落ち、地域全体に負の影響がのしかかります。そこが議論に上がりづらいのです。

地域鉄道は人員をギリギリに削っているので、地域連携や企画に人を割きづらく、交通政策の所管部局は商工振興、観光、都市計画などの部局と連携する必要があるのですが、行政組織のルールや慣習ではこれが難しいのです。そして鉄道が衰退して地域も衰退するという負のスパイラルに陥りがちです。もちろん、役割が終わっていて生かしようもないという鉄道路線は、撤退も考えるべきです。しかし、現状では鉄道を生かせるのに生かしていない路線が多いと見ています。

なぜ「公募社長」になったのか

――大手コンサルティング会社の中には自治体向けに地域活性化のための提案を行っているところもあり、鉄道の活用についても言及しているのでは?

実はあまり聞きません。この分野はまちづくりがかかわるので足が長いのです。コンサルが得意とする調査・分析のフェーズよりも、どう改善していくかという実装のフェーズに手間と時間がかかるので、計画書を作って終わりというのではなく、実装について1つひとつ課題を乗り越える伴走支援する必要があります。そこを私は重視しています。

――話題を変えて、山田さんがこれまで取り組んできたことは?

大学卒業後、IT業界に就職し主にマーケティングに従事しました。2011年の東日本大震災で災害復興の支えとなった三陸鉄道を見て、私は鉄道が好きなので残された人生は鉄道を社会の役に立てたいという思いで、由利高原鉄道のITアドバイザーで活性化策を実験し、これを横展開するために合同会社日本鉄道マーケティングを立ち上げ、全国の地域鉄道へ提案に回っていました。そんな折、若桜鉄道が社長を公募したのです。

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