元3セク社長が指摘「赤字ローカル鉄道の処方箋」 「日本鉄道マーケティング」の山田氏に聞く

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――通常の1日当たり利用者は3000人でその3倍の1万人が利用すると想定していたところ、3万8000人が訪れたと聞きました。

大きなインパクトがあり、鉄道のポテンシャルを感じていただけました。2024年4月に近江鉄道は公設民営による上下分離となり、新しい体制に移行しました。お役目も果たせたので10年ぶりに東京に戻り日本鉄道マーケティングの業務を再開しました。

大切なのは「伴走支援」

――それで、次の仕事が鉄道の伴走支援。

分析や戦略立案はとても大事なのですが、地域の環境や状況はまったく異なるので処方箋もそれぞれ変わってきます。先ほどもお話ししたとおり、私は伴走支援がいちばん重要と考えています。実装は大変難しいのです。現地の方々の声を聴き地域を理解しつつ、鉄道とまちづくりへの理解を積み上げていく必要があります。鉄道の運行をギリギリのコストと体制でやってきた方々に、地域や行政との関係づくりも担っていただくのか、新しい体制を組み直すのかなどの議論も必要ですし、行政の方々はほぼ3年で異動されてしまうので、短期に成果を出しつつ腰を据えた体質改善も進める必要があります。

――鉄道事業者と自治体、どちらが顧客になる?

どちらもです。とはいえ、地域鉄道事業者は運行に必要な人員を残してそれ以外の人を削っており、企画に割ける余裕がないのです。まちづくりと連携する必要もあるので、自治体さんのほうがお話ししやすいかとは思います。

――アドバイス次第で今後、状況が大きく改善できそうな路線はある?

都会に向かって走っているのに維持が難しいと言われている路線は、かなり改善効果があると思われます。鉄道が使われないのには理由があるはずなので、そこを探り当てて直していくことになります。地域鉄道事業者は青息吐息で運営し、やむなく減便や値上げをして使いづらくなり、ますます利用者が減り、地域が枯れていく。こんな状況を逆回転させることが重要だと考えています。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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