医薬品の販売規制案にドラッグストア反発の事情 市販薬のオーバードーズ問題に有効な規制とは

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ドラッグストア業界が産業として、多大なコストに見合った効果が政策によって得られるのかを問うことも当然だ。どんなに単店舗で規制を強化しても隣の店舗で買えてしまえば効果は薄いという主張は一理ある。

本人確認のとれるマイナンバーカードの活用やオンライン資格確認の活用情報に“濫用薬”も含めるべきとの指摘は多くの委員から出ている。導入には読み取り端末やデータ保存料などの費用負担の問題が横たわっているとも言われているが、事業者だけでなく、国の“濫用薬”への姿勢も示す必要も指摘されている。その1つがマイナンバーを活用する仕組みの構築だ。

総合感冒薬の購入に身分証の提示等が必要に?

厚労省「とりまとめ」の方向で進めば、総合感冒薬の多くについては20歳未満の人は複数・大容量の購入はできなくなるとともに、購入の際に身分証の提示等が必要になる。ネット購入では映像を伴うオンライン対応となる。20歳以上でも小容量では必要に応じて、複数・大容量では原則、身分証等の提示が必要になる見込み。記録する購入者情報については具体的には氏名や年齢が挙げられており、個人ごとに頻回購入を確認することを主目的としている。

今後、年末までにおよそ月1回程度のペースで制度部会が開かれ、着地点を見出す見込み。その内容は年内には「報告書」の形で公表され、2025年度には国会で薬機法改正案が審議される。

総合感冒薬を購入するのに身分証の提示を拒む人がどれぐらいいるかは読めない。面倒だと感じる人に向けては、総合感冒薬自体に“濫用薬”の成分を含まない商品が多く登場してくる可能性を指摘する声もある。あくまで規制は総合感冒薬にかかっているのではなく、濫用のおそれのある医薬品の成分を含有しているかどうかに関わるからだ。

「とりまとめ」の方向を支持する日本薬剤師会は、規制はかかるが、その機会を確実な情報提供に活かすことができるとの利点を提示する。「そもそも医薬品は販売において規制が設けられている品目であり、それは国民の安全確保が目的だ。そのために専門家がいる。それを忘れない議論をしてほしい」(日薬副会長の森昌平氏)。

森昌平副会長は、加えて「制度が変わってもそれを動かすのは“人”」だとし、「販売可否の判断、適切な選択支援や注意喚起、情報提供、必要な支援に結びつけるための専門家の対応が重要」とするとともに、「専門家によって国民が“守られている”という実感を持ってもらうことが何より重要だ」と話している。

嶋根氏も、「誰がどのような情報を提供するのかが問題」と指摘。「薬剤師や登録販売者が乱用や依存リスクの高い患者を気づき、声をかけ、共感的な態度で話を聞き、必要に応じて専門的な支援につないでいくゲートキーパーの役割を担うための研修プログラムの開発も重要となる」と指摘している。

制度改正には国民からの理解も不可欠な要素になる。「知らず知らずに苦しむ」人が出てしまう可能性のある“濫用薬”の問題にどう国民は向き合うのかが問われているともいえる。

菅原 幸子 医薬品業界誌記者、『ドラビズon-line』編集長

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すがわら さちこ / Sachiko Sugawara

2000年から20年にわたって医薬品メーカー、ヘルスケア卸、薬局・ドラッグストアを取材。現在は「ドラビズon-line」の編集長を務めている。

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