「サイゼが香川で苦戦中」噂は本当か検証した結果 ミラノ風ドリアをもってしても…高き「うどんの壁」

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アツアツのうどんが溶き卵に投入され、ちょっとだけかたまる。

ここのうどんの食感は、「グミのよう」とも形容されて、硬さと柔らかさが不思議に同居している。それも相まって、全体の食感はふんわりしていて、まるでケーキのよう

ちょっとだけかたまった卵はほんのり甘く、その中にだし醤油のしょっぱさが加わる。極上の甘じょっぱさが、口を支配するのであります。

なかむら
はい、うますぎるー(筆者撮影)

村上春樹がエッセイでも訪れたうどん屋で、村上は、「なかむら」が地元に根付く、超絶ローカルな場所であることに驚いている。ちなみに、かつての「なかむら」は、ネギはお客さんが直接畑から切っていたらしい。村上が驚くぐらい、さぬきうどんは、それぞれの店がそれぞれ、地域に馴染んできた。

それに、どのうどん屋も、それぞれ特色がある。例えば、「長田 in 香の香」。

長田 in 香の香
長田 in 香の香(筆者撮影)

ここのウリは、「釜あげうどん」(小・400円)だ。もっちりとした麺のおいしさもさることながら、初来店の人が、ほぼみんな驚くのが、その圧倒的なつけ出汁のうまさ

香川 うどん
写真を見てるだけで食べたい…(筆者撮影)

いりこ出汁がこれでもか、と効いている出汁は、単体で飲めてしまうほど。香川県のうどんの出汁には、よくいりこが使われている。瀬戸内海に浮かぶ伊吹島は、いりこが有名で、それが使われている場合が多い。

つまり、香川にとってうどんとは、圧倒的に、その土地の風土や気候に根付いた食べ物なのである。

また、肉うどんが絶品の「綿谷」、さらに「釜バターうどん」が有名だけれど、実は「ひやかけ」(冷やしたかけうどん)もおいしい高松の「うどんバカ一代」など、それぞれの店にそれぞれの特徴がある。

香川 うどん
綿谷の牛肉ぶっかけ(小・540円)。小なのに、食べるとかなりの満腹度(筆者撮影)

うーむ、そう考えると、サイゼリヤが突如やってきても、なかなかその牙城は崩せないのかもしれない。それにしても、うどんはうまい。

香川のサイゼはどうなっていくのか?

なんだかサイゼリヤの記事ではなく、うどんの記事になってしまった感もあるので、ここで整理しておこう。

・香川県民の友人は「あんまり流行ってない」と言っていたが、たしかに満員ではなかった。でも、ガラガラでもないので「苦戦」は言い過ぎの感。「定着の途中」といったところ
・香川では、ランチに「うどん」という強敵がおり、価格帯的にもほぼ同等、もしくはうどんのほうが安い
・車社会ゆえ、夜の集客は都会よりは苦戦しそう
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また、香川県の方といろいろ話してみると「サイゼリヤは混んでいる、という先入観がある」とか「うどんの提供スピードが速すぎる」という話も出てきて、香川におけるサイゼ定着問題(と言っていいのか?)は、他にもいくつかの要因がありそうだ。

やはり、全体を見ていると、特にランチ需要における「うどん」の強さは、なかなかサイゼの人気度をもってしても攻略が難しいのかもしれない、と思えてくる。

ただ、まだ香川県におけるサイゼの歴史ははじまったばかり。これからさらに出店を広げていけば、うどんと並ぶ香川の定番ランチ・食事へと変化を遂げるかもしれない。

【画像】「サイゼが香川で苦戦」の噂の真偽を検証した結果、「超人気うどん店」の美味さに震えた…うどんの写真を見る(25枚)
サイゼリヤ
香川のサイゼ、がんばれ!(筆者撮影)
瀬戸内海
「地中海」ともいわれる、瀬戸内海。香川の魅力だ。そして、筆者はイタリアを勝手に思い浮かべるのである(筆者撮影)
谷頭 和希 チェーンストア研究家・ライター

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

チェーンストア研究家・ライター。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

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