日本で「夫婦別姓は他人事」と考える人の大問題 「虎に翼」が問う法律とは誰のものなのか

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日本国憲法に合わせるため、民法を改正するべく設置された司法省民事局民法調査室で働く寅子。戦時下に同情の形を採ったマタハラを受け、生涯の仕事と決めた弁護士を妊娠時に辞めて以降、彼女は「はて?」を言わない。

上司の久藤頼安(沢村一樹)には、食い足りなさから「謙虚だね」と言われてしまう。守旧派の帝大教授の神保衛彦(木場勝己)が、民法改正でイエ制度をなくせば日本の美風が消え大変な混乱に陥る、と同意を求めた際の返事も煮え切らない。

法律は庶民の暮らしに直結する存在

しかし、その後大切な人たちの言葉と日本国憲法の条文に背中を押され、自分らしさを取り戻していく。民法改正審議会で神保に対し、旧民法と旧憲法が規定した、個人の尊厳を犠牲にするイエ制度の保護は「大きなお世話」だとはっきり言う。その後審議はまとまり、結婚後は、夫婦のどちらの名字を名乗ってもよいことになった。

寅子の母の猪爪はる(石田ゆり子)と兄の妻で元同級生の花江(森田望智)は、自分たちの旧姓が家族の姓となった場合を連想し、子どもたちと共に笑って語り合う。このシーンは、法律が庶民の暮らしに直結する存在だと明確に示している。

興味深いのは、民法改正審議会の「大きなお世話」に続く寅子の発言だ。

「もし、神保先生の息子さんが結婚して妻の氏を名乗ることにされたら、息子さんの先生への愛情は消えるのですか? 私はもし娘が結婚したとして、夫の名字を名乗ろうと佐田の名字を名乗ろうと、私や家族への愛が消えるとは思いません。名字1つで何もかもが変わるだなんて、悲しすぎます」

この発言は、夫婦同姓の改正民法下で、結婚した2人が妻の姓を選ぶ可能性がある、という内容だ。嫁入り・婿入りした先の名字を名乗るほかなかった戦前と比べ、名字を選べる戦後は一歩前進だ。しかし、このセリフはそのまま、選択的夫婦別姓制度の議論が活発な現代にもスライドできる。

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