撤退観測も飛ぶ「みんなの銀行」は浮上できるか 若年層傾倒が裏目に、タイムリミット残り4年

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FFGから「2027年度までに黒字化」と、事実上のタイムリミットを設定されたみんなの銀行。残り4年で黒字化を果たせなければ、一度は否定した撤退観測が再び現実味を帯びる。

喫緊の課題は、収益柱であるカードローンのテコ入れだ。みんなの銀行はこれまで実行したローンの実績を基に、若年層に特化した与信モデルを構築。今年度から与信審査に自前のモデルを採用し、残高の伸長やデフォルトの抑制を図る。

もう一つの課題であるシステムコストは、BaaSの収益化がカギを握る。現時点でBaaS基盤の提供先は5社あるが、BaaS経由での口座獲得数は5万と進捗は鈍い。顧客基盤を有する大口先の開拓を通じて口座獲得を急ぐ方針だが、みんなの銀行のBaaS手数料は口座数ではなく取引量に連動する。口座獲得だけでは不十分で、決済利用を促し稼働率を高める必要もある。

FFGもテコ入れ急ぐ

投資家の突き上げを食らっているFFGが、みんなの銀行の経営に関与を強めるかも焦点だ。4月1日、FFGでDXを所管する藤井雅博執行役員が、みんなの銀行の代表取締役会長に就任した。FFGの商品をみんなの銀行経由で販売したり、みんなの銀行が開発したシステムをFFGに提供したりするグループ間取引が増えそうだ。

他方、みんなの銀行は経営の独立性を尊重すべく、これまではFFGからの露骨な「ミルク補給」には慎重だった。今後もデジタル投資や広告宣伝の手は緩めない意向で、親会社との取引を増やしつつも一定の距離感を保てるかが問われることになる。

みんなの銀行はかねて、自らを「ネット銀行」ではなく、デジタル技術を駆使して新たな金融サービスを提供する「デジタルバンク」と称する。預貸という伝統的な銀行業に頼らず、システムの外販やBaaSで稼ぐビジネスモデルに脱皮できるかは、デジタルバンクの将来性を占う試金石でもある。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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