日テレ・小学館の「調査報告書」に釈然としない理由 「セクシー田中さん」問題はどこに向かうのか

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日本テレビ
(写真:yama1221/PIXTA)

「1」の契約関係については、これも昭和時代から続く悪しき商習慣。ドラマ化は大企業同士のビッグプロジェクトであり、著作物を扱っているにもかかわらず、日本テレビは放送前に原作者や脚本家と契約書を締結していませんでした。しかもそんな不確かな関係性のうえで、内容の改変に対する難しいやり取りを重ねていたわけですから、まさに綱渡りの制作であり、「まさかの放送中断や打ち切り」もありえたのではないでしょうか。

ちなみに筆者自身もテレビ局と出版社と長年仕事をしてきましたが、出演・執筆ともに契約書を交わした記憶はほとんどありません。契約書を交わすのは、テレビ局はNHKのみ、出版社は書籍の時のみという印象で、請求書すら発行しないというケースが多くを占めています。

筆者のような個人事業主は、よくわからずに従う形で取り引きを続けている。あるいは、多少の疑問程度なら「業界の商慣習だから」「担当者も忙しいから」と受け流す人が少なくないのです。事務手続きについては、今回のような「問題が発生してから変える」という後手の対応になりがちで、悪い意味での“クリエイティブ・ファースト”という感覚が残っているのでしょう。

逆に「4」の危機管理体制は、令和時代に求められる対応。どうすれば脚本家のSNS投稿を防ぐことができたのか。それに対する世間の反応にどう向き合い、原作者にどう寄り添えばよかったのか。「出版社やテレビ局は、原作者や脚本家など当事者のSNS投稿にどう関与し、事態の悪化を防ぐために何をすればいいのか」という重要な論点を提示できたことはポジティブなことでしょう。

芦原さんがXに投稿した最後の言葉は、「攻撃したかったわけじゃなくて。ごめんなさい。」でした。これは「自分の投稿が多くの人々がネット上で脚本家を攻撃することにつながった」ことに対する言葉でしょう。テレビ局や出版社には「当事者がこの事態に心を痛めていた」ことを忘れず、ガイドラインのような組織的な対策を求めたいところです。

むしろ原作者の顔色をうかがう傾向

調査報告書の内容を報じたある記事のコメント欄に、「テレビ局も出版社もプロデューサーから脚本家に至るまで、オリジナル脚本ではない、原作付きのドラマをやらせていただいてることへの意識改革まで踏み込まなきゃ終わらんだろ」という書き込みがあり、1.5万もの「共感した」が押されていました。

その指摘は間違ってこそいないものの、筆者が日ごろ取材している限り、「現在そのような意識改革が必要なスタッフは、ごく一部に過ぎない」という印象があります。昭和・平成の時代はさておき、現在のプロデューサー、演出家、脚本家らは原作へのリスペクトがあり、原作者の意向を第一に考える人がほとんど。むしろ「原作者を怒らせないように……」と顔色をうかがい、気をつかいすぎる人が増えて、逆に原作者から「自由にやってください」と背中を押されるケースをよく見かけるくらいです。

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