植民と移民の対立こそアメリカ大統領選の争点だ アメリカ社会の価値「寛容さ」は残るのか

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21世紀のアメリカを語るうえで、これら2つのアメリカのどちらをとるかでアメリカに対する見方は大きく異なる。

21世紀のアメリカという国の指針を考えるうえで、2つのどちらかの選択は重要だ。2024年11月に迫ったアメリカ大統領選挙、少なくともトランプとバイデンとの闘いの結果は、この2つのどちらに位置するかによって分かれるともいえる。

もちろん、この問題は長い伝統をもつヨーロッパ諸国においても、今まさに論点の中心で、フランス、イギリス、ドイツなどにおいても、それぞれの国家がメルティング・スポットを目指すのか、あるいはトマト・スープを目指すのかで、世論は真二つに分かれている。

この世論の分裂こそ、今アメリカで起こっている大統領選挙の争点かもしれない。それは、マルチナショナルな国家としてのアメリカと、アングロサクソン的アメリカとの攻防ともいえる。

ピルグリム・ファーザーズと17世紀

アメリカには1つの神話がある。17世紀、アメリカに植民しようと帆船メイフラワー号に乗ったイギリス人は、イギリスで果たせない夢を持ってアメリカにやってきたのだとされる。それは自由と平等の実現だった。当時のイギリスを見ると、いまだ絶対王制の国家であった。

イギリスで1649年に清教徒(ピューリタン)革命が起こり、トマス・ホッブズが1651年に『リヴァイアサン』を書いた頃だ。時代は急激に変化していた。それは、王政支配への疑義が提出されたからである。

重要なのは、国家ではなく、個人であるという思想こそ、この革命の原因でもあった。個人を守るために国家が必要なのであり、個人は国家を構成する単なる構成員ではないという主張だ。

国家は、個人が自らを守るために要請されたのであり、国家がその成員である個人を生み出したのではないということである。

王政国家は、長い間「王権神授説」によって守られ、家族の延長線上の大家族として家族の上に君臨し、その家長こそ国王であった。大家族を構成する国民は、国王の自由になる単なる構成員、単なる臣民にすぎなかった。

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