1ドル=70円台が詰め寄る日本企業への「覚悟」

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一時1ドル=76円30銭と最高値に接近した超円高は、日本企業に対して根本的な構造転換を迫っている。

「76円という水準だけではなく、そのスピードが厳しい」と伊地知隆彦・トヨタ自動車専務役員は嘆いた。トヨタでは為替の前提を1ドル=82円から同80円に変更したが、環境の変化に追いつけていない。トヨタによると、対ドルで1円円高に進むと、営業利益が約300億円目減りする。その影響は甚大だ。

ドルばかりでない。円はユーロやアジア通貨に対しても軒並み高くなっている。日本政府が4兆円程度の単独介入をしたところで、「大きなトレンドは円高が続かざるをえない」(小林喜光・三菱ケミカルホールディングス社長)。

キヤノンの場合、対ユーロで1円円高だと約30億円、リコーは約15億円の減益要因。それでも各社は、「円高のマイナスはさらなる固定費削減で補う」(藤田能孝・村田製作所副社長)と、従来どおりの方策を唱える。が、一ドル=70円台に突入した今回の事態は、明らかに企業が耐えうる限界を超えつつある。

EMSで日本通さず

これまでの企業努力で、中には円高の影響を極力減らした企業も、なくはない。代表格は東芝とソニーだ。

東芝が対ドルで円高のデメリットを受けないのは、アジアでEMS(電子機器の受託生産会社)を活用したことによる。ノートパソコンや液晶テレビなどは、生産のほとんどをアジアのEMSに委託。海外で生産、海外で販売と、外−外の取引で完結するから、決済はドルだけで済む。またソニーも、海外生産と海外販売がそれぞれ7割に及ぶために、相殺ができ、「今期はブレークイーブン」(加藤優CFO)なのだという。

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