「ワーケーションということで『滞在している間、どんな仕事をしたいですか?』と聞かれたんですね。
そのとき私は『おにぎりをにぎりたいです』と答えました。おにぎりをホテルのスタッフのみなさんに食べてほしいと思ったんですね。
スタッフの方々は、ホスピタリティを提供する立場の方々ですが、そのみなさんにホスピタリティを提供したかったのです。
それで社員食堂でおにぎりをにぎったら、みなさん、ことのほか喜んでくださって。社長さんも含めてスタッフがみんな一緒になって食べて、おにぎりひとつでものすごく盛り上がるんです。
和多屋別荘は2万坪という広大な敷地を有していますから、大工さんなんかも常駐されているわけです。その大工さんも本当に喜んで食べてくれて、『おやつに持っていっていい?』といわれて持ち帰る人もいました」
これが縁となり、厨房スタッフ全員が自主的に休みをそろえ、神谷さんが主宰する台所だけの建物「生活工房 とうがらし」で研修をするなどの交流が始まった。
その様子を見ていた和多屋別荘の社長である小原嘉元氏が「うちでおにぎりをにぎってみてはいかがですか?」と申し出たことが「おにぎり 神谷」のスタートとなった。
日本の食文化を地方から発信する「ライスツーリズム」
「嬉野は古くからの茶どころで、お茶を求めて旅をする『ティーツーリズム』が定着しています。5代続く茶農家であり米農家でもある永尾豊裕園の永尾裕也さんもいるからと、話がトントン拍子に進みました。
嬉野に通うようになって知ったのは、1300年前から温泉があり、500年前から嬉野茶があり、400年の歴史がある肥前吉田焼もある。その土地で生まれるお米でおにぎりをにぎって、お茶といただくというのは格別の体験となります。
同時に日本の食文化を地方から発信する『ライスツーリズム』を発案して、全国でおにぎりをにぎる活動を始めましたが、嬉野はそのスタート地としても打ってつけの場所でした」
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