原油価格はよほどのことがない限り下がらない アメリカのインフレも簡単には落ち着かない

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だが、ラファへの侵攻が継続するならば、それに対する報復としてイランやその代理勢力がイスラエルへの攻撃を激化する可能性は極めて高い。その際には情勢緊迫に対する懸念から、原油相場も再び大きく上昇すると見ておいたほうがよい。

一方、中長期的な視点に立って見れば、5月以降、気になる材料が複数入ってきたのも事実だ。1つ目は、アメリカのブルームバーグが伝えたように、アメリカとサウジアラビアが安全保障に関する協定で歴史的な合意に近づいている、という観測記事だ。

アメリカとサウジが安全保障協定で合意したら?

もし合意が成立すれば、サウジはアメリカの最新兵器を入手することが可能になるかもしれない。これは中東における同国の立場を更に強固なものとするだろう。

その際、サウジはイスラエルに対しても、国交樹立の提案を行うと見られており、実現すれば中東の安定につながるとの期待も高い。イスラエルも、サウジとアメリカが手を組んで妥協を迫ってくれば、ハマスやパレスチナに対する強硬姿勢を転換せざるをえなくなることも十分にありうる。

またアメリカの協力で防衛体制が一段と強固なものとなれば、サウジと対立するイスラム教シーア派の武装勢力などによる石油施設攻撃に対する懸念なども後退することになるだろう。

実際、サウジは2019年9月、イエメンの反政府武装勢力であるフーシ派によるドローン攻撃によって、主要油田であるフライス油田とアブカイクの脱硫施設の稼働が停止、同国の石油生産が一時的に半分にまで落ち込んだこともある。

その後、サウジは石油施設に対する警備を強化したこともあり、さすがに生産が大幅に落ち込むような攻撃は起きていない。だが、可能性がゼロになったわけではない。もしサウジとアメリカの協力によって、こうしたリスクがさらに後退すれば、原油は新たな売りを呼び込み、価格が下落することも考えられよう。

もっとも、こうしたシナリオは、あくまでも将来的な需給に関する心理的な見通しの変化にすぎず、足元の需給に大きな変化をもたらすものではない。サウジとアメリカが最終的な合意に至った場合には、市場もそれなりに反応は示すだろうが、それが決定的な下落の流れを作りだすまでには至らないと考えておいてよいのではないか。

もう1つのニュースは、アメリカの連邦取引委員会(FTC)が、石油メジャーであるエクソンモービルによる、シェール大手パイオニア・ナチュラル・リソーシズの買収に対して、承認する見通しが伝わったことだ。

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