JR東、申し込み殺到「JREバンク」で特典奮発の勝算 破格の大盤振る舞いでも相互送客で実を採る

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JREバンクに申し込みが殺到した理由は、ユーザーが恩恵を受ける入会特典が「破格」であるからにほかならない。

JR東の運賃が4割引となる割引券や、利用状況に応じて最大6000ポイントのJRE POINT(JREポイント)、そして普通列車のグリーン車に乗車できる「Suicaグリーン券」などが付与される。ライバルである私鉄大手の幹部が「けっこうな大盤振る舞い」と評するほどの特典だ。

こういった特典は、JR東グループ内に設けられた7名ほどの「JREバンク対応チーム」が中心となり1年以上かけて議論して決めたものだ。

「もともとグループ内にあるもの(サービス)を生かして、お客様が『嬉しいな』と思っていただけるものは何かを、さまざまな議論を経て決めていった」と、JR東マーケティング本部の大井洋氏は振り返る。

もちろん、ボツになった企画もある。当初は、フリー切符のような、安い運賃でJR東内の路線を幅広く利用できる特別乗車券も構想にあった。だが、「きめ細かくサービスを展開するにはシステム的に対応するのが難しかった」と、JR東の関係者は明かす。

「JREポイント経済圏」という構想

JR東の経営戦略において、同社初の金融サービスとなるJREバンクはどのような意味を持つのか。それは顧客囲い込み戦略の「橋頭堡」だ。JR東の伊藤敦子常務は、「『JREポイント経済圏』を確立するためのツールのひとつにしたい」と強調する。

JREポイント会員を中心に据えた、移動、購入、決済といったサービスのワンストップでの提供――。2018年に公表した経営ビジョン「変革2027」ではそう掲げている。

JR東日本の「変革2027」
JR東日本は経営ビジョン「変革2027」で、JREポイント会員を中心に据えた、ワンストップサービスの提供を掲げている(記者撮影)

少子高齢化による人口減少を受けて鉄道事業も先細りする懸念がある。そのため、JREポイントを武器に事業間での「相互送客」を促すことで、新たな成長戦略を加速する狙いだ。JR東の場合、鉄道だけでなくコンビニやホテル、賃貸マンションといった顧客の生活圏に密着した事業を多数持つ。そのためにポイント展開もしやすい。

かつてはサービスや会社ごとに独自のポイントを提供しており、グループ内に20以上のポイントサービスが乱立していた。ポイント連携もなく、ユーザーにとってみれば、商業施設の「アトレ」で貯めたポイントをほかの駅ビルで使用できないなど使い勝手が悪かった。

そのため、JR東はグループポイントの共通化に着手。2016年から5年をかけてSuicaポイントや「ビューサンクスポイント」(クレジットカードのビューカードのポイント)を含めた、主なポイントサービスをJREポイントのプラットフォームに統合した。

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