新国立競技場、船頭なき"大艦"の視界不良

なぜ建設費が2520億円に膨らんだのか

土台を造る前にそれらを取り除かなければならず、取り除いた後は土を埋め戻す必要がある。ただ、新国立競技場の地下の設計によっては、どこまで取り除く必要があるか流動的。現在も作業は部分的にしか進んでいないようだ。

さらに、プロポーザル方式(技術提携を結んだ特定の業者と契約を結ぶ方式)で竹中工務店、大成建設の2社と建築契約を結んだはいいが、詳細な設計図は未完成。キールアーチをどちらが建設するか、決まっていないという。さまざまな建築関係者からこうした話を聞かされると、なぜこんなに悲惨な状況に陥ってしまったのか、とあらためて嘆かざるをえない。

責任の所在はどこに?

コンペの委員長としてザハ氏のデザインを選んだ後、沈黙を続ける安藤忠雄氏、コンペの主催者であり事業主体でもあるJSCの河野一郎理事長、その監督官庁である文科省の下村大臣、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長、新たに五輪・パラリンピック担当相となった遠藤利明氏、そして秋には誰かが就任するスポーツ庁の初代長官。

新国立競技場建設の責任者はいったい誰なのか。これからは誰が牽引役として問題を解決していくのか。

1964年の東京五輪でも、丹下健三氏のデザインした代々木競技場の建設が資金不足で遅れ、五輪開幕に間に合わないことが危惧された。そのときは、当時大蔵相だった田中角栄氏の鶴の一声で建設が進んだ、といわれている。

そんなリーダーシップを期待するのも時代錯誤。計画的なスポーツ政策に基づく新国立競技場の建設こそ、21世紀の日本が進めるべきやり方のはず。だが、どうやら日本社会は進化することなく、前回大会以前の古い時代に退化してしまったようだ。

「週刊東洋経済」2015年7月11日号<6日発売>「核心リポート02」を転載)

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