近年、英国のEU(欧州連合)離脱や米中貿易摩擦、コロナ禍、ウクライナ侵攻、度重なる自然災害などの影響で世界のサプライチェーンは混乱に陥っている。1990年代以降、日本企業は生産拠点をコストの低い地域に配置し、部品や原材料の安価な調達による生産性向上に努めてきた。一転、2020年ごろからサプライチェーンのリスクと不確実性が顕在化し、生産・調達における大きな転換を迫られている。
サプライチェーン上のリスクは、気候変動や地政学的な理由から、今後より頻繁に発生することが予想される。そのとき取るべき政策を検討するに当たって、詳細な分析は急務だ。本稿では、サプライチェーンをミクロ実証的に分析した最新の研究成果を紹介するとともに、サプライチェーンのレジリエンス(強靭性)に向けたデータ活用について考えたい。
企業の国際的な取引ネットワークを捉えるために00年代ごろから研究に利用されてきたデータが、通関手続きから得られる「税関データ」である。全国の港湾や空港で財の流入(輸入)と流出(輸出)を記録したこの情報は非常に有用で、これまでさまざまな研究で用いられてきた。
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