金融庁「サイバー攻撃対策」の新体制とは? サイバーセキュリティ対策調整室が発足

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そこで、金融庁は今回、サイバーセキュリティに関する金融機関との建設的な対話と事態の一斉把握を進める。金融機関同士の情報共有の枠組みの実効性を引き上げて、業界横断的な演習を継続的に実施する考えだ。また、金融分野やのサイバーセキュリティ強化に向けた人材を育成していく。

金融機関同士の情報共有組織としては、米国には「FS-ISAC」がある。日本でも昨年11月のサイバーセキュリティ基本法の制定に併せて、「金融ISAC」が発足した。だが、今とのころ、金融ISACの参加機関数は約70と一部の金融機関に限られているのが実情だ。

ロンドン五輪は2億件のサイバー攻撃を受けた

金融庁による今回の強化策を契機に、金融業界の間でサイバーセキュリティに対する意識がさらに高まり、金融ISACを介した情報共有、セキュリティ対策の水準が高まることが期待される。

日本は2020年に東京オリンピック・パラリンピックの開催を控えている。2012年のロンドン大会の際には、約2億件とも言われる膨大な数のサイバー攻撃が発生したようだ。この事実を踏まえると、今後、サイバーセキュリティへの取り組みを官民レベルで強化していくことは必須の課題となってきていると言っていい。

浪川 攻 金融ジャーナリスト

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なみかわ おさむ / Osamu Namikawa

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカー勤務を経て記者となる。金融専門誌、証券業界紙を経験し、1987年、株式会社きんざいに入社。『週刊金融財政事情』編集部でデスクを務める。1996年に退社後、金融分野を中心に取材・執筆。月刊誌『Voice』の編集・記者、1998年に東洋経済新報社と記者契約を結び、2016年にフリー。著書に『金融自壊――歴史は繰り返すのか』『前川春雄『奴雁』の哲学』(東洋経済新報社)、『銀行員は生き残れるのか』(悟空出版)などがある。

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