廃線寸前だった弱小鉄道が生き残れたワケ 「四日市あすなろう鉄道」誕生までの道のり

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YAR設立後、内部・八王子線の公有民営化を目指した作業が精力的に進められる。7月25日、四日市市は、学識経験者、沿線自治会、沿線高校、NPO法人の代表者等から構成される「内部・八王子線利用促進協議会」(以下、「協議会」)を設置し、利用促進に向けた取り組みを開始。そして、今年3月11日に鉄道事業再構築実施計画について国土交通大臣の認定を受け、4月1日に同線はYARの鉄道路線として再スタートしたのである。

このスキームでは、第三種鉄道事業者としての四日市市が保有する鉄道施設・車両、および近鉄から無償借用した土地をYARに無償貸与し、YARが第二種鉄道事業者として列車の運行を担当する。また、YAR発足後の10年間で、鉄道施設の維持修繕に約4億円、鉄道施設の老朽更新に約21億円が投じられる予定となっている。四日市市に対して、設備投資・修繕費用の補助として、国が3分の1、三重県が6分の1を負担する。

また、YAR発足後の10年間で発生する20億円の損失のうち、近鉄による協力金8億円を差し引いた12億円を四日市市が負担する。今後、赤字額の拡大で四日市市の追加の財政負担が発生する事態を避けるためにも、利用促進は不可欠だ。

新型車両導入など明るい話題も

一方、明るい話題としては、2015年秋以降に新型車両の導入が予定されている。「協議会」に参加した上野氏は「新車ではロングシートはなくなる予定だが、『膝詰めの付き合い』ができるロングシートを是非残してほしいと市に要望している」とナローゲージ車両の持つ良さを力説する。

前述の「四日市の交通と街づくりを考える会」の宗像氏が「無事YARとして再スタートしたことにはホッとしている。しかし利用促進はこれからが正念場だ」と語るとおり、市民・行政・鉄道事業者がタッグを組んで、利用促進に取り組むことが、内部・八王子線の持続的運営のカギを握る。

四日市市の山本氏は次のように抱負を語る。「鉄道施設・車両を保有する第三種鉄道事業者として、運行や施設の管理に責任を持つことに、身の引き締まる思い。路線として存続できたことに満足せず、利用促進に全力で取り組んでいく」。

新生四日市あすなろう鉄道の挑戦は、まだ始まったばかりである。

大塚 良治 江戸川大学准教授

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おおつか りょうじ / Ryouji Ohtsuka

1974年生まれ。博士(経営学)。総合旅行業務取扱管理者試験、運行管理者試験(旅客)(貨物)、インバウンド実務主任者認定試験合格。広島国際大学講師等を経て現職。明治大学兼任講師、および東京成徳大学非常勤講師を兼務。特定非営利活動法人四日市の交通と街づくりを考える会創設メンバーとして、近鉄(現・四日市あすなろう鉄道)内部・ 八王子線の存続案の策定と行政への意見書提出を経験し、現在は専務理事。著書に『「通勤ライナー」 はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)。

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