廃線寸前だった弱小鉄道が生き残れたワケ 「四日市あすなろう鉄道」誕生までの道のり

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両聖寺の本堂で、開催された鉄道利用に関するパネルディスカッションの様子

このパネルを仕掛けた井上氏は、子どもたちの通学時の見守りや、清掃活動を率先して行うなど、子どもたちが電車に親しめる環境づくりに腐心してきた。

壇上から聴衆に向かって、内部線・泊駅の草刈り活動を呼びかけ、翌日、本当に実行してしまったほどである。井上氏は「子どもたちに電車を利用してもらうことが大切だとの思いで、電車利用を積極的に促している。子どもと大人を巻き込んで、内部・八王子線を活性化させたい」と熱い思いを語った。

存続への長い道のり

この日は最終的に、沿線住民自らがイベントなどを通して内部・八王子線の活性化を進めるとともに、YARも地域のイベントに積極的に参加して、住民と交流を深めることが必要だとの見解でまとまった。会場で見ていた日紫喜孝行・YAR鉄道営業部運輸課運輸管理所長も「地域のイベントに積極的に参加します。私たちにできることは何でもします」と語り、井上氏が呼び掛けた泊駅の草刈り活動に参加した。

ただ、ここまでの道のりは決して平坦でなかった。内部・八王子線の年間乗車人員は1970年度の722万人から年々減少し続け、2013年度は359万人に。これに伴い、2006年末に近鉄から四日市市に対して内部・八王子線の利用促進に向けた勉強会設置の申し入れが行われ、同線の運営に関する議論が始まった。

2010年12月に近鉄から四日市市に対して、内部・八王子線運営への支援要請が行われたことを受けて、同市は2011年3月に策定した『四日市市都市総合交通戦略第一次推進計画』(2011~2013年度)に車両更新補助と西日野駅、内部駅の駅前広場整備を盛り込んだ。

しかし事態は好転せず、2012年1月には、近鉄から四日市市に対して「一定の運営費補助がなければ鉄道という形態での事業継続が困難である。2013年夏頃を目途に基本的な方向性を打ち出したい」との申し出があり、同年6月に四日市市議会に「総合交通政策調査特別委員会」が設置された。

その後、四日市市議会議員有志によって「内部・八王子線の存続活動を推進する議員連盟」が立ち上がり、フォトコンテストやウォーキングイベントなどを開催して存続活動への機運を盛り上げると、沿線の高校PTAらでつくる「北勢地区高等学校PTA連合会」が近鉄に2万人を超える署名を提出。さらには四日市市自治会連合会、四日市商工会議所および、鈴鹿市自治会連合会も近鉄に対して内部・八王子線の存続を求める15万人署名を提出し、鉄道存続を強く要請した。

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