サントリーCM「ひろゆき」起用に見る"したたかさ" 成田悠輔はダメなのに、ひろゆきは大丈夫な理由

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2017年には、新製品ビール「頂」のプロモーション動画がセクハラ的だと批判され、動画は公開中止となった。

これら過去のケースでは、サントリー側も炎上は想定しておらず、想定外の批判を受けて取り下げざるをえなかったと思われる。しかし、今回の「伊右衛門 特茶」の広告に関しては、一定の批判の声が出る可能性は想定しており、多少の批判では取り下げないという判断をしていたと思われる。

今回の「伊右衛門 特茶」の広告は、ひろゆき氏であるからこそ成立する、「ひろゆきありき」の企画だ。というのは、今回の広告は、ひろゆき氏がかつて行った「トクホのお茶を飲んでも脂肪は減らない」といった発言に、サントリー側が反論するというシナリオになっている。そして「ひろゆき氏が間違ったことを言っていた」という展開になる広告である。

CMでは、ひろゆきさんの過去の発言への反論が行われており、つまり「ひろゆきありきの企画」だったことがわかる

その点で、この広告に同じ企画を他のタレントや有識者を起用して行うか否かという選択肢はなく、ひろゆき氏を起用してこの企画をやるかやらないか――という判断であったはずだ。

キリンの成田氏の広告に限らず、大半の広告は、表現は多様であっても「この商品・サービスはよいですよ」ということを、出演者を通じて伝えようとする。そして、その人が起用されるのは、商品を紹介するにふさわしい、人気、知名度、好感度、信頼性、知識などの要素備えているからだ。

しかし、サントリーの広告は”真逆”である。特茶の効能をひろゆき氏が説明するのであれば、「この広告は信用ならない」となるだろうが、ひろゆき氏の過去の言動を否定する構成になっている。つまり、ひろゆき氏を今回起用し、また今後何か彼が問題発言をしたとしても、それによって広告に込めたメッセージの価値が毀損したりはしないのだ。

起用自体に問題はないのか?

批判的な反応の中には、「こういう人物を起用すること自体がおかしい」という意見もある。「広告表現がどうこう」といったことでなく、サントリーのような誰でも知っていて、多くの人が商品を買うような大手企業が、ひろゆき氏のような言動がたびたび波紋を呼ぶ人物にお金を払って、多くの人の目に触れる広告に起用してもよいのか? という意見だ。

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