「単なる輸送手段ではない」ローカル線の矜持 乗客1700万人!「江ノ電」の強さの秘密③
もちろん、公共交通機関ですから安全が何よりの基盤です。楽しさ・感動を加えて「安心」を提供し続けられるかどうかが、信頼・絆の醸成に最も大事なことなのです。
ローカル線の雄が伝えたいこと
――集客に苦労されているほかのローカル鉄道へのアドバイスなどはありますか?
最近では、ローカル鉄道各社でも自らが観光資源になろうとする動きは当たり前になってきました。SLを走らせたり、有名なキャラクターをペイントした電車を走らせたりとさまざまな工夫をなさっています。
でも、先ほども言ったように、鉄道だけで人を呼ぶのは難しい話です。地域と一体にならないと、現実には厳しいと思います。地方創生を国策として掲げていますが、財政的に予算も厳しいわけですし、日本全国どこでも、地元・地域が自ら工夫してメディアも活用し、お客様を引き付ける努力が必要なのではないでしょうか。
繰り返すように、大事なのはあくまでも地元の魅力です。鉄道はそのお手伝いをする存在であり、地元の風景と一体化した魅力でなければ、観光のお客様は一度乗りに来てくださるだけで終わり、何度も足を運んでいただくのは難しいことです。
やはり、観光についても地元との絆は大切で、鉄道は地元のイメージを象徴する存在として尽力するのが有効なのかもしれません。一緒になって、地元の魅力を掘り起こすことが大事です。
ですから、簡単にすぐにお客様に来ていただけるというのはできないと思います。日本全国どこでも、地域は地域の魅力がもっとあるはずなのですが、そういうものを一緒になって掘り起こし、PRの媒体として鉄道も使うと考えられたほうがいいと思います。
――全国のローカル鉄道活性化のためにもいろいろ取り組んでこられたようですね。
今、江ノ電が地方の同業他社と一緒になって取り組んでいるのは、こちらから向こうにお客様を送り込み、向こうからもこちらにお客様を送り込んでいただく――という取り組みです。そして、向こうの沿線の魅力を駅や車両などを使って宣伝し、向こうでもこちらの観光資源や魅力をPRしてもらっています。
これは鉄道事業者が、メディア(媒体)になっているわけで、普通の旅行エージェントや広告代理店ではできない企画を、鉄道事業者がやっていると言ってもいいと思います。
そのように、相手の地方鉄道と一緒になって、自らがメディアとなってやるというところに、鉄道会社ならではの地域活性化の役割があると思うのです。
江ノ電ではこれまで、京都の京福電鉄、石川県の北陸鉄道、長野県のアルピコ交通、遠くは青森県の津軽鉄道などと、そうした相互の取り組みをしてきました。
こうした取り組みは、民営鉄道協会の社長会がありますけど、そういう場を通じて各社のトップと交流し、トップダウンで方針を決めて具体化するという形でやったほうが話が早いと思います。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら