「アジアのベストレストラン」1・2位に日本の快挙 評価には「料理以外」の要素も大きく関わる

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また、順位を左右する要素として意外と大きいのは、授賞式がどの都市で行われるかということだ。

華々しい授賞式は料理人、ソムリエ、サービス担当者、またメディア関係者などが一堂に会し、交流する場だ。

授賞式に参加する投票者は、その前後におのずからその近隣のレストランを訪れることになる。だから、授賞式のあとにその国や地域でランクインする軒数が増えるという現象が、これまでも起こってきた。

日本での授賞式開催が"悲願"の理由

すでに12回目を数える「アジアのベストレストラン50」、日本で授賞式が行われたことはまだない。

実は2020年に、いったんは日本での誘致に成功し、佐賀県武雄市で「アジアのベストレストラン50」の授賞式が行われることが決定していた。

しかしコロナで移動が制限されはじめた時期と重なり、結局、その年の授賞式はオンライン開催となってしまった。

コロナ後の海外旅行解禁や円安の影響を受けて、2023年夏ごろからふたたび日本にも多くの観光客が訪れるようになった。

なかでも、魅力的な食事を目的としたいわゆるガストロノミーツーリズムを、2023年から日本政府でも観光戦略のひとつとして推進している。

観光客に各地方を訪れてもらうことで、農業や漁業、飲食業や宿泊業など、「観光分野での経済波及効果を地域全体で最大化すること」(観光庁)を目的としたものだ。

「現在のベストレストラン50のリストに入っているレストランのシェフたちは今、結果的に各国のアンバサダー的な役割まで担っています。しかも、ほとんどは自費での参加です」と語るのは、「ベストレストラン50」の日本の評議委員長である中村孝則さんだ。

「このアワードの理念は、単なるランク付けではありません。むしろ、ガストロノミー文化を担う人たちが国を超えてつながることで、おたがいの多様性を認め合い、レストランの楽しみを共有し、レストラン産業全体の社会的な地位を向上させることを目的にしています。

このアワードをぜひとも日本で開催したいというのが私の悲願でもあります。授賞式を日本に誘致することで、日本のガストロノミーや食文化の魅力を国内外の人にさらに広く知ってほしいと強く願っています」

日本からランクインしたレストランのシェフや関係者たち
日本からランクインしたレストランのシェフや関係者たち。写真右端が日本評議委員長の中村孝則さん(写真:ⒸThe World)

レストランの意義は料理の味の追求だけではない。レストランが人と人をつなげ、外部から人を呼び込む役割をも担うものならば、行政の後押しやサポートがもっと強くなることが望まれる。

レストランはその地域の食文化を体現する重要な存在であり、人々が食事を通してその土地を理解しその土地の地場産業振興につながる、親しみやすく普遍的なコンテンツであるからだ。

今回のランクイン店をはじめとする国内のレストランが、日本の食の豊かさを伝える魅力的な「大使」になるに違いない。

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星野 うずら レストランジャーナリスト

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ほしの うずら / Uzura Hoshino

出版社勤務のかたわら、アジアやヨーロッパなど海外のレストランを訪問。個人サイト「モダスパ+plus」やTwitter(@caille2006)で、「ミシュラン」「ゴ・エ・ミヨ」などガイドブックの解説記事やレストラン評を執筆。飲食専門のポータルサイトでシェフインタビュー連載中(飲食店.com)。Instagram(@photo_cuisinier)では、飲食に携わる人のポートレートを撮影している。
 

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