任天堂の岩田社長が「WiiのCM」でNOを告げた相手 「これはアメリカで成功します」私は断言した
岩田氏は京都でチームと一緒にWiiリモコンの開発を指揮した。特に画期的なのは動作感知のテクノロジーで、リモコンを振ってゲームができる。ベースボールゲームではバットを、テニスではラケットを振るようにリモコンを振ってプレイできる。
Wiiリモコンを使って幅広いゲーム体験ができることを伝えたおかげで、CMのインパクトは絶大だった。しかも日本人ビジネスマンが出会った家族と交流するという、愉快で共感できる内容に仕立てた。ビジネスマンが家族と一緒に様々なWiiのビデオゲームを楽しみ、愉快な動きや癖を披露するなど、打ち解けた仲間意識に包まれる。どのゲームのCMも、今や有名なこの文句から始まる。
「Wii would like to play(Wiiがあなたとの対戦を待っている)」
突然の「CM変更」電話
私は広告代理店レオ・バーネット・ワールドワイドと共同で手掛けたこのCMを支持し、出来上がったものを事前に岩田氏にも見せていた。ところがCMを公開する1週間前になって、岩田氏は自宅にいる私に電話をかけてきた。
「レジー、私は京都でみんなにCMを見てもらっているが、心配なことがある」
日本の任天堂の経営陣は、CMに出ている日本人ビジネスマンの、西洋の家族との接し方が馴れ馴れしくて、くだけすぎていると感じていたらしい。
「レジー、CMを変えてほしい」
任天堂本社のチームが指摘した問題点は、CMの成功要素を真っ向から否定するものだった。CMを変えることは、これまでの仕事を否定することになる。これまで私がCMに携わってきた経験からいっても、この指摘は間違っている。
このCMはこれまでの殻を突き破り、インパクト絶大だ。この問題についてあれこれ話し合う中で、「過剰な馴れ馴れしさ」がアメリカ、カナダ、ラテンアメリカでは気にされないと考える理由を私は説明した。
話し合いが煮詰まる中、私は言った。
「ミスター・イワタ、あなたが私を任天堂に呼んだのは、任天堂の世界最大の販売地域に強力なマーケティング担当者が必要だったからですよね。あなたは私の業績をご覧になってきたし、私を昇進させてくれました。どういう結果が出るのか自信がありますから、お任せください。このCMはアメリカで成功します」
しばらく間が空き、それが永遠に続くかのように重く感じられたときに、岩田氏は口を開いた。
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