"勝ち組"日系LCCピーチ、羽田線就航の勝算 日系としては初の挑戦、成否を握るのは?

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「お客を運ぶと経済の論理が働いて、交通インフラも整っていくというのは関空(関西国際空港)でも経験してきた」と話すのは、ピーチの井上慎一CEO。同社が本社を置く最大拠点の関空でも、最初に深夜早朝便を就航したときはほとんど交通網が整備されていなかった。利用客数が不透明な中、バス会社が運航に消極的だったのだ。だが、深夜便が増えると年々客も増え、今ではアクセスが24時間確保されるようになった。

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2014年度の平均搭乗率は85%超と高い水準を誇る(撮影:ヒラオカスタジオ)

今回の就航で、羽田でも同様の動きが広がることに期待する。「課題があるからやらないのではなく、お客を連れてきてからどうしようかと考えるほうが健全だ」(井上CEO)。

ただ、ピーチは羽田を拠点空港とはしておらず、現在その計画もない。その点で関空とは前提が大きく違う。羽田―台北線の目標搭乗率は7~8割。同社の平均を下回る数値を掲げているところに、慎重な姿勢が見え隠れする。今回の就航便の成否が、今後の深夜早朝枠に対する見方を左右するといえる。

そんな中、1つの朗報といえるのが中国系LCC、春秋航空による羽田―上海便の就航だ。同社は8月5日から羽田の深夜枠を使い、運航を始める。価格は片道8000円から(燃油サーチャージなどを除く)。羽田発が午前1時30分、上海着が午前3時25分。上海発が午後6時50分、羽田着が午後11時だ。深夜枠に就航する航空会社が増え、利用客を一定数確保できるようになれば、バス会社などの交通機関も深夜運行に積極的になるかもしれない。

片道4時間ならすべてが照準

ピーチはすでに成田には乗り入れており、首都圏は「昼の成田、深夜の羽田」(井上CEO)とすみ分ける。今回、羽田と成田両方に就航したことで認知度を上げ、これまで関西中心だった同社の顧客を首都圏にも本格的に広げたい考えだ。

羽田発のほかの就航地に関しては、これまでの方針どおり「国内外は区別せず、片道4時間の範囲であればすべてがターゲット」と井上CEOは言う。首都圏の利用客にとっては、深夜のアクセスに不便が残っても、成田空港よりはアクセスがいい。羽田発着の国内LCC便に対する潜在需要は小さくない。

2014年度の平均搭乗率は85.9%と、日本の航空会社としてトップレベルを誇るピーチ。同年度の決算も、昨年パイロット不足による計画減便を実施したにもかかわらず、2年連続で増収増益を達成した。今年度は累積損失の解消を目指している。

ホームグラウンドである関西を飛び出し、“アウェー”ともいえる首都圏で同様の成功を収められるか。日系LCCで頭一つ抜けたピーチが次のステップを進めるうえで、羽田線は試金石となりそうだ。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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