日本人の食生活に入り込む「海の奴隷労働」の実態 タイの人権活動家が語る、過酷すぎる漁の現場

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――『ゴースト・フリート』では、何年にもわたって監禁状態で働かされていたり、薬物中毒にさせられたりする漁船の乗組員も登場します。

映画『ゴースト・フリート 知られざるシーフード産業の闇』のポスター(提供:ユナイテッドピープル)

乗組員はインドネシアの見知らぬ島に連れていかれ、「お前たちにはこれだけ借金がある。借金を完済するまで給料は支払えない」と通告されました。

乗組員は当初、1年くらい我慢すれば給料をもらえるだろうと思っていましたが、支払いはなされませんでした。

私たちは2014年から2016年にかけて、合計12回、救出のための船を出し、インドネシアの離島に監禁されていたタイ人や近隣国からの出稼ぎ労働者約2000人を船に乗せて助け出しました。

タイ政府は法規制など対策を強化

――その後の状況はどうでしょうか。

パティマ・タンプチャヤクル(Patima Tungpuchayakul)/Labour Protection Network(LPN)共同創設者。1975年生まれ。2004年、タイでLPNを設立。奴隷状態にあった漁船乗組員の救助活動が評価され、2017年ノーベル平和賞にノミネートされた(撮影:梅谷秀司)

救出活動に関するAP通信の報道がきっかけとなり、アメリカや欧州連合(EU)などではタイの水産物に対する信用が失墜し、タイ政府は法規制など対策の実施を迫られました。具体的には労働時間に上限が設けられ、船員リストの作成が義務付けられました。乗組員は給料支払いのための銀行口座を作り、ATM(現金自動預け払い機)を通じて現金を引き出せるようになりました。

以前のように、1年間に数千人もの人たちをインドネシアの離島から救出しなければならないという状況はなくなりました。しかし、すべての問題が解決しているわけではありません。

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