あえて東電株主が質した「原発撤退の是非」 株主提案の15議案はすべて否決

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議長を務めた數土会長

出席株主からは、さまざまな質問が出た。

「原発事故で世間からの風当たりの強い社員のためにも、原発から撤退すべきではないか」との問いに対し、廣瀬社長は「電力を少しでも安く安定供給していくには、原発は大切な電源。福島事故を二度と起こさないよう、安全対策を徹底する」と理解を求めた。

株式の復配見通しに関する質問への回答でも「配当はできるだけ早くしたい。そのためには安定的・継続的に収益を出していく必要があるが、柏崎刈羽原発の再稼働は効果が大きい」と、早期再稼働の必要性を訴えた。

「HD制に移行後は持株会社に原発事業が置かれるが、どうやって被災者の賠償をしていくのか」との問いには「独立させる3事業(発電・燃料、送配電、小売り)からさまざまな形でHDへ拠出してもらって、福島への責任を果たしていく」と答えた。

小売り自由化で「危機感はすごくある」

株主の1人は、福島第一原発事故時に所長だった吉田昌郎氏の聴取記録「吉田調書」の報道で、朝日新聞が「所長命令に背いて所員が撤退した」と誤った記事を掲載した問題に関し、「でっちあげに対し、名誉毀損で損害賠償を請求すべきではないのか」とただした。

これに対し、廣瀬社長は「9割の社員が逃亡したとの記事は、非常に残念な報道。事実とは異なる」と強調。そのうえで、「朝日新聞は謝罪し、社会的制裁も受けている」と述べ、提訴はしない考えを示した。

また、来年4月からの家庭向けを含めた電力小売りの完全自由化に関し、ある株主が「新聞のアンケートによると、60%以上の利用者が電力会社を替えてみたいと考えているようだが、大丈夫か」と質問。小売り部門トップを務める山崎剛常務執行役は、「危機感はものすごく持っている」との認識を示した。

そのうえで、「他業界と一緒になって多様なメニューを用意するとともに、他社の顧客チャネルを使って販売エリアを拡大する」ことで契約減少を食い止める方針を説明した。また、2017年からの都市ガス小売り全面自由化を機に、LNG(液化天然ガス)を大量調達してガス販売を増やしていく戦略も明らかにした。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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