変貌するエイベックス、ヒット不在でも稼げる秘密
かつてヒット曲を飛ばしたディレクターには、耳の痛い話だろう。だが発売済みのタイトルを見直すと、大赤字のタイトルが相当数あったのも事実だ。市場が半減したにもかかわらず、音楽事業の組織体制は大きく変わっていなかった。
人員のスリム化と並行して、売り方も大幅に効率化する。少ない費用で最大限の効果を出すために、アーティストごとの特性を見極めて訴求先を絞り込むのだ。配信に強い女性歌手、イベントが人気の韓流アーティストといったように、売り方を柔軟に変えて損益分岐点を引き下げる。以前のように、CDを50万枚以上売る前提での大型プロモーションは大幅に絞り込んでいく。
歌手の活動範囲を広げライセンス収入増やす
一方で余った人員は、成長分野へ振り向ける。その一つが、携帯電話向け放送局「BeeTV」だ。
07年12月にNTTドコモと提携して発足されたBeeTVは、“問題児”と呼ばれ続けてきた。初年度から40億円の赤字を計上し、09年のサービス開始時も「月額315円を支払って、小さな画面で誰が視聴するのかと周囲に言われた」(エイベックス通信の村本理恵子取締役)。
一般的に有料動画配信のメインユーザーは男性だが、あえて若い女性をターゲットに据え、よりメジャーなプラットフォーム構築にこだわった。大型作品を年に1本以上投入し、プレミアム感を重視。映画『世界の中心で、愛をさけぶ』で知られる行定勲監督が、豪華俳優陣をそろえて「女たちは二度遊ぶ」「パーティーは終わった」といったドラマを手掛けた。
昨年2月に配信した「パーティーは終わった」では、新作映画さながらの一大プロモーションを展開。「女たちは二度遊ぶ」は、映画館での上映も行った。当初から携帯電話以外での2次利用を想定し、資金を投じてハイビジョンで撮影。「DVDレンタルなどの2次利用が進んで、最終的に収支が合えばそれでいい」(村本取締役)とのスタンスだ。