変貌するエイベックス、ヒット不在でも稼げる秘密

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音楽ディレクターを大量に入れ替える

背景には、音楽市場の苦境が影響している。国内のCD販売は、1998年の6075億円をピークに右肩下がりが続く。期待された音楽配信も10年には減少に転じ、両方合わせても市場規模は3700億円となった。

厳しい環境下、マーケティング力の強い大手がシェアを拡大。直近はソニー・ミュージック、ユニバーサル・ミュージック、エイベックスの国内大手3社でシェア5割を握るまで寡占化が進む。3社が競い合う中で、売れるアーティストの囲い込みは避けられない。

一方、中小規模のレコード会社はシェアを落とし続けている。ドル箱のミリオンセラーが出れば食いつなぐことができるが、ヒット曲が生まれる確率は格段に低くなっている。「今の若者は作られたヒットを見抜き、避ける傾向にある」と大手レコード会社幹部は頭を悩ませる。テレビCMやドラマとのタイアップ曲を街中で大量に流し続ければ、たちまちヒットにつながる法則はもはや成り立たない。00年にミリオンセラーは39曲もあったが、昨年はわずか4曲。気になる楽曲はユーチューブでチェックできるため、よほど気に入らなければ購入に至らない。

さらには音楽配信で1曲ずつのダウンロードが可能になったことで、アルバムのようなまとめ売りもできなくなった。旧来的な音楽ビジネスを取り巻く環境に明るい兆しはまるで見えず、体力勝負になっている。

エイベックスも7月1日に、音楽部門を縮小した。その際、竹内CFOは「自分の仕事を棚卸ししてはどうか」と、音楽ディレクターらに呼びかけた。成功は失敗の始まりで、成功体験が自分のスタンダードになる。だが5年も経てばそれも過去のもの。今でもできると思うことに大きな問題がある、と。

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