専業主婦から「アンダークラス転落」への危険経路 貧困に陥りやすい女性の構造的な原因

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多くの女性は離死別を機にアンダークラスへと流入してくる。そのようすをみたのが下の図表である。

主婦は危険と隣り合わせの危うい地位

結婚直前の所属階級をみると、半数以上の53.8%までが正規雇用(新中間階級または正規労働者階級)で働いており、非正規雇用だったのは21.2%、無職が22.7%だった。ところが結婚直後には、正規雇用で働いていた女性の大部分が退職して無職、つまり専業主婦となっている。

このため無職の比率は59.5%にまで跳ね上がる。非正規雇用で働いていた女性の多くは、そのまま働き続けてアンダークラスからパート主婦に移行したようだ。

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離死別1年前をみると、結婚直後より非正規雇用が増え、その分だけ無職が減っている。離死別までの間に、専業主婦からパート主婦になったのである。そして離死別後には、大きな転機が訪れる。無職は大幅に減って1割を少し上回る程度となる。大部分の女性たちが、生計を立てるため仕事に就いたことがわかる。正規雇用も4%ほど増えているが、大半は非正規雇用、つまりアンダークラスである。

無職の比率はその後も減り続け、離死別3年後にはわずか6.1%となる。多くの専業主婦が、離死別を機に非正規の仕事についてアンダークラスへと流入したこと、また多くのパート主婦が、離死別によってアンダークラスへと移行したことがよくわかる。

学校を卒業して社会に出た段階では、多くの女性たちが正規雇用の職をもっていた。ところが結婚すれば家に入るのが当然という通念にしたがって退職したことから、彼女たちは経済的自立の基盤を失った。もはや取り返しがつかないことだが、これが現在の彼女たちの窮状の、そもそもの背景なのである。

このように女性には、いったん専業主婦やパート主婦を経験したあとで、離死別を経てアンダークラスに流入するという、男性とは異なる流入のルートがある。結婚して主婦となり、何不足なく順調に女の人生を歩んでいると思われた女性が、アンダークラスに転落する。主婦という地位は、つねにそんな危険と隣り合わせなのである。

橋本 健二 早稲田大学人間科学学術院教授

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はしもと けんじ / Kenji Hashimoto

1959年、石川県生まれ。東京大学教育学部卒業。東京大学大学院博士課程修了。現在、早稲田大学人間科学学術院教授。専門は社会学。

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