この土讃線特急「南風」は、四国山地の真ん中で徳島県を経由し、大歩危・小歩危の渓谷を抜け高知県に入る。
といっても、しばらくは吉野川上流の山の中。くねくねと山中を走り続け、ようやく土佐山田駅付近で車窓が開けると、ほどなく県都のターミナル・高知駅へ着く。岡山―高知間はおよそ2時間30分の、在来線特急の旅である。
高知県は、四国にあって唯一(といっても四国には4県しかないのですが)、本州や九州のほかの地域と向き合わない。桂浜の向こうには、茫洋たる太平洋が広がるばかりだ。その意味では、まるで陸の孤島のような地理的条件を抱えている。
高知の人々は、いつのときも太平洋の大海原を見つめていたのだ。それが、幕末から維新期にかけて先進的な人物を多く輩出したことにつながっているのだろうか。
三セクの土佐くろしお鉄道
そんな高知だが、鉄道という点ではいささか恵まれていないといっていい。通っている主要路線はただ1つ。特急「南風」が走る土讃線である。土讃線は、高知駅からさらに西に向かって延びており、終点は窪川駅だ。ここから先は第三セクターの土佐くろしお鉄道の線路が続き、“土佐の小京都”中村や宿毛といった県南西部の諸都市へと通じている。
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