北陸新幹線「ウフフCM」はこうして生まれた

「バザールでござーる」の水口氏起用の舞台裏

駅構内に掲示されているポスターは観光地の写真が多いので、そこへシンプルなイラストのポスターが掲示されれば、逆に目立つかもしれないという目論見もあった。

電通がアートディレクターとして起用したのは、広告企画・制作会社Hotchkiss(ホッチキス)で代表を務める水口克夫氏。サントリーやソフトバンクをはじめ、大手企業の広告を次々と手掛ける売れっ子だ。「バザールでござーる」が人気となったNECの広告では、自らイラストも描いた。

新幹線のCMといえば、伝説的な存在が1989年のJR東海「クリスマス・エクスプレス」である。改札口の柱の陰で恋人を待つ女性の姿が印象的で、新幹線がほとんど映らないにもかかわらず、新幹線の利便性をうまく表現した内容だった。このCMを手掛けたのは三浦武彦氏。当時電通に所属していた水口氏の上司にあたる人物だ。入社4年目の水口氏はポスターを担当していた。

「新幹線という硬い金属のかたまりではなく、新幹線が運んでいる人と人の出会いや感情を描かないと、広告の意味はない」。完成されたCMを横目で見ながら、水口氏は痛感した。

正面から見ると笑顔に見えた

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確かに正面から車両を見ると、笑っているように見えなくもない(撮影:梅谷秀司)

今回も「ただ単に新幹線の車両がバーンと映ったポスターを作っても意味はない」。どんなデザインにするか考えているうちに、あるアイデアが浮かんだ。「北陸新幹線は北陸の人にとって50年来の悲願。待ち望み続けてようやく来るのだから、うれしくて仕方がない」。みんなを笑顔にする新幹線というコンセプトに自然と行きついた。

北陸新幹線の写真をあれこれ見ているうちに、真正面から撮った写真がなんだか笑っているように見えた。それが、ビジュアルの原型になった。

イラストを描いたのは、フランス人イラストレーターのポール・コックス氏。「ルミネ」のポスターで日本にもファンは多い。水口氏はコックス氏の明るいラテン的な作風に惹かれた。東京から見れば“裏日本”というイメージのある北陸地方だが、ユーラシア大陸から見れば“日本の玄関口”。外国人から見た明るいイメージの北陸をビジュアル化した。

水口氏はコックス氏と1泊2日で金沢を訪問。E7系をじっくりと観察してもらった。そして完成したのが、今回のイラストだ。「北陸の人って、どんな風に笑うんだろう。大阪の人のような『アハハ』ではないよね。『ウフフ』くらいかな」。ウフフというキャッチもこの時に決まった。

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