そして現在、アップルが最も有望なジャンルとして捉えているのは、言うまでもなく「Apple Vision Pro」である。ティム・クックCEOが初めてその原型を体験したのは8年も前のことだとされているが、 Vision Proは現時点においてもまだ実験的なプロジェクトと言えるだろう。
その部品コストは1500ドル以上とされ、本来は7000〜8000ドルで売らければ利益が出ないといわれる始末だ。製品としての成熟度は、まだまだ低く、最も優れたOSの開発者であるアップルをしてもまだ、Vision ProのOSは未完成の領域である。同様にユーザインターフェースにおいても最も優れた開発者であるアップルをして、いまだに完全な使い勝手を実現しているとは言えない。
一方で、コンピューターのエンジニア、あるいは映像や音楽、あるいは3Dモデリングなどの新しい表現手法を身近に感じている若い世代のクリエイターにとって、Vision Proがもたらす可能性は極めて大きい。
空間コンピューターは将来大きな勢力になる
筆者自身、Vision Proをアメリカまで入手しに出かけたほどだが、4〜5年後、より多くの人が空間コンピューターと呼ばれる新しいジャンルの端末を使い始める未来は想像できる。
この製品がなかったとしたならば、おそらくここまでの確信を持てなかっただろう。ただし、Vision Proがプラットフォームとして定着し、収穫期を迎えるまでには、長いハーベストサイクルが予想される。
しかしこれが、コンピューターと人との関係性を大きく変える節目となる製品ジャンルになることは、多くのビジョナリストが感じているのではないだろうか。空間コンピューターというジャンルが将来のテクノロジー業界における一大勢力になることは十分に予想できる。
クアルコム、グーグル、サムスンの3社は、年内にも空間コンピューターを発表するとアナウンスしている。 3社は水平分業による空間コンピューターの構築を試みているが、この企業連合がアップルに追いつくのは至難の業だろう。 まだ未熟な技術を、市場の反応やエンジニアの欲望を満たしながら、まとめあげるときに、複数企業の連携が機能するとは思えないからだ。
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