日本の司法はおかしい、だから闘い続ける

周防正行監督に裁判の問題点を聞く

周防正行(すお・まさゆき)
●1956年生まれ。立教大学文学部仏文科卒業。監督作品に『ファンシイダンス』『シコふんじゃった。』『Shall we ダンス?』『それでもボクはやってない』『ダンシング・チャップリン』『終の信託』『舞妓はレディ』など。著書に『それでもボクはやってない──日本の刑事裁判、まだまだ疑問あり!』など。

――取り調べの手法から裁判所の対応に至るまで、実際に刑事被告人になった人たちが、その悲惨な経験を綴った書籍は昔から沢山出ていますし、ベストセラーにもなっているのですが、なかなか国民に浸透しない様です。

そういう本がここまで多数出ていることを知らなかったこともショックでした。取材を進めれば進めるほど、痴漢事件だからひどいのではなく、おおむね刑事裁判というものがひどいから痴漢事件もこうなってしまうということがわかっていきました。

――裁判官と検察官の関係にも驚かれたとか。

注目の事件を弁護士に教えてもらって傍聴に行くでしょ、その時、その法廷の前後の時間帯の事件も傍聴することにしてました。否認事件だけでなく、罪を認めている事件の裁判も知りたかったからです。すると、同一法廷では、ほぼ同じ裁判官と検事のコンビで裁判が行われていることを知りました。つまり、裁判官と検事はずっと同じ法廷に居て、被告人と弁護士だけが入れ替わるわけです。見ているとその合間合間で裁判官が検事に今終わったばかりの公判についてアドバイスしたり、談笑していたりするんですよ。裁判官と検事が公判の合間にあんな風に話していたら、公正さを疑われても仕方がない。実際、検察官に便宜を図っているものではないとしても、誤解を受けるようなことはすべきではない。

――判検交流(研修の一貫で裁判官が検事の業務に、検事が裁判官の業務に就く人事交流)なんてもってのほかですね。

明日から検察官に戻るという人が、今日は裁判官として無罪判決を書くなんてありえないと思うでしょ。いくら、公正に判断していると言われても、公正さを疑われるようなことはすべきではない。さすがに批判に耐えかねたらしく、数年前にひっそりとやめた様ですが。

「勾留の運用は適正」と言い切った裁判官

――映画公開と同時に出版されたシナリオ本「それでもボクはやってない」(幻冬舎)の後半には、刑事司法では常識とされている手続きについて、木谷明弁護士(多数の無罪判決を書いたことで知られ、劇中の大森裁判官が尊敬する元裁判官)に解説をしてもらう対談ページが付いています。

痴漢事件の場合、まず駅の事務室に連れて行かれ、警察官が来て警察に連れて行かれ、取り調べが始まる。実際には事務室に連れて行かれた時点で民間人によって逮捕されているのに、取り調べが始まって、もうお前は逮捕されているんだと言われるまで本人はそのことを知らない、否認している限り勾留が続くとか、証拠になるものは全て検察官が押さえてしまい、検察官にとって都合の良いものだけ証拠開示し、それ以外のものは被告側に見せない、密室で作られる供述調書は検察官が読み上げて被疑者に聞かせ、被疑者本人がサインしたことをもって適正に作られた調書だとするなど、被疑者に著しく不利な習慣に関する質問項目は合計23項目に及ぶ。

 

シナリオを書きながら、なぜこんなことがまかり通っているのか、どうにも理解も納得もできないことが多数出てきたんですよ。

――木谷弁護士も感嘆されている様ですが、この質問項目を見る限り、もはや監督もプロの法律家の領域ですね。これだけの見識を持つ人を、予定調和を重んじる法制審がよく委員として認めましたね。

民主党政権下だったということ、そして日弁連に推薦枠を出した以上は事務局としても反対する理由はなかったということでしょう。

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