オスカーでの人種差別を米メディアが書かない訳 ロバート・ダウニー・Jr.がアジア系俳優を無視?
そんな彼の態度を見て、ソーシャルメディアには、「ロバート・ダウニー・Jr.は、まるでバレー・パーキング(車寄せ)で車の鍵を渡すみたいにキー・ホイ・クァンからオスカー像を受け取った」「あまりにも無礼すぎる」などという批判が多数寄せられた。
中には欧米に住むアジア系の投稿者による「私は日常でいつもああいう扱いを受けている」というような書き込みもあり、ダウニー・Jr.の行動は無意識の人種差別を表すものだという受け止められ方が強まっていった。
そして、授賞式も終わりに近づいた頃の主演女優部門の発表。同じように過去の同部門受賞者5人が舞台に立ち、昨年の受賞者であるミシェル・ヨーが封筒を開けたのだが、ここでもちょっと普通でないことが起きた。
名前を読み上げられたエマ・ストーンがヨーからオスカー像を受け取ろうとすると、ヨーはジェニファー・ローレンスに渡し、ストーンはローレンスからそれを受け取って、ストーンはまずローレンスを、次にその隣にいたサリー・フィールドをハグしたのである。
ヨーには、やはり舞台の上にいたシャーリーズ・セロン、ジェシカ・ラングの後にさっと握手をしただけ。しかも、これらのことは速いスピードで起きたため、テレビを見ている人には、ストーンがヨーの前を通り過ぎてローレンスをハグしたようにしか見えなかった。
すでにダウニー・Jr.についての話題でソーシャルメディアが盛り上がっていたところへ、これを見た人たちからは「エマ・ストーンも同じじゃないか」との疑問が浮上。ヨーもアジア系であるせいで、「白人の中にある無意識の人種差別」説は、より説得力を持つことになってしまったのである。
ミシェル・ヨー自ら誤解を解く
ストーンのため、その方向転換を図ったのは、ほかならぬヨーだ。翌日、ヨーはインスタグラムを更新。ストーンに向けて、「おめでとう。私はあなたを混乱させてしまいました。オスカー像を渡すという輝かしい瞬間を、あなたの親友であるジェニファー・ローレンスと分かち合いたかったのです」と、舞台の上で起きたことは自分の気遣いのせいだったと説明したのだ。おかげで、ストーンに対する批判は、ひとまず落ち着いた。
ここで最初に戻るが、この一連の出来事を、オスカーを徹底取材した「ロサンゼルス・タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など主要な新聞、「ヴァラエティ」「デッドライン」「ザ・ラップ」など業界サイトは、まるで取り上げていない。リアルタイムでの報道記事にも、翌日の振り返り記事にもない。
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