地球外生命体「火星より木星で発見」期待高い根拠 天文学者が語る太陽系最大の惑星の知られざる姿
ところがエウロパは、木星の巨大な重力(潮汐力)を受けていて、エウロパ全体が伸び縮みしています。地球の海の満ち引きがあるのも月の潮汐力によるものですが、木星の潮汐力はそれよりずっと強いものです。これによってエウロパの内部が温められ、氷が解けて海になっているようなのです。
その証拠に、エウロパの表面にはクレーターがほとんどありません。これは、隕石が落下してクレーターができたとしても、内部の海から水がしみ出してきてクレーターを埋め、氷の表面がなめらかに保たれるためだと考えられています。
木星に生命が存在する可能性があると言える理由
ただし、地球のようにそこで生命が生まれ、命をつないでいくためには、水だけでは不十分です。例えば、地球上の多くの生き物は呼吸によって酸素を体に取り込んでいます。実は、エウロパには地球の気圧の1兆分の1というたいへん希薄な大気があり、その主成分は酸素なのです。
エウロパ表面では弱いながらも太陽光が届くことで氷が蒸発し、水蒸気ができます。この水蒸気を木星から放たれる強力な放射線が分解することで、酸素が生み出されているのです。
この酸素が氷の層をくぐり抜けて地下の海まで届くなら、生命存在の可能性は高まります。テキサス大学のマーク・ヘッセさんたちの研究チームは、エウロパ表面の氷の循環をコンピュータシミュレーションで詳しく調べました。(※)
エウロパには氷の裂け目のような地形(カオス地形)が広がっている場所があります。研究者たちは、エウロパの氷が部分的に解けて塩水となり、大気中の酸素と混ざり合う地域でカオス地形が作られると考えています。
(※)Hesse, M. A., Jordan, J. S., Vance, S. D. et al. Downward Oxidant Transport Through Europa's Ice Shell by Density-Driven Brine Percolation Geophysical Research Letters,Volume 49, Issue 5, article id.e2021GL095416
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