横浜線直通計画もあった「みなとみらい線」秘話 2024年で開業20年、距離は短いが工事は難航
ここで注目すべき点は、路線の起点が東神奈川駅になっていることだ。当初、みなとみらい線は国鉄(現・JR)横浜線との直通を念頭に計画されたのである。
だが、当時は1987年の国鉄民営化を直後に控え、財政面に課題を抱えた国鉄はそれどころではない状況に置かれていた。
そこで浮上したのが、東急東横線との直通運転だった。しかし、横浜駅には京急、相鉄という他の私鉄も乗り入れているが、なぜ東急になったのか。それにはいくつかの理由が挙げられるが、まず鉄道輸送面に着目すると、横浜―桜木町間の輸送密度の低さと、東横線横浜駅(地上2階にプラットホームがあった)の拡張性の低さがあった。
当時、渋谷方面から電車に乗り、横浜駅に到着するとほとんどの乗客が降りてしまい、横浜―桜木町間は、乗客もまばらだった。また、構内にカーブもある横浜駅プラットホームは上下線とも手狭で、しかも造作物の一部が国鉄線路上にはみ出しているような状況にあり、乗降客がさらに増えた場合の拡張の余地は、ほぼゼロだった。
東急「みなとみらい進出の足がかりに」
さらに東急グループ全体で見れば、新たな商圏に自社ブランドで進出する足がかりになるというメリットがあった。東急はみなとみらい21地区に社有地がなかったため、当初はこのエリアをあまり重視していなかったようである。だが、みなとみらい線への乗り入れが横浜市から打診されたのを契機に、積極姿勢に転換した。『東急100年史』(2023年9月発行)には、当時の五島昇社長の言葉が記されている。
「(みなとみらい21事業は)東急グループの事業エリアのまん中で展開される事業であり、保有地がないからと座視していては、横浜駅西口を“失った”と同様なキズあとを、後世に残すことになる。しかも、都市開発事業には東急グループは実績もあり、これから大きな柱にしていこうとしている部門だ。この際、東急グループ版“みなとみらい21”プランを作成して、積極的に売り込むぐらいのことをやってみてはどうか」
その後、東急グループは住友グループと連携して、みなとみらい駅に直結する24街区を対象とする「クイーンズスクエア横浜」(4.4ha)開発プロジェクトに参画している。
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