「公務員が一生懸命に働いていることを認めてほしいなら、こちらも誠実に動かないと。もう少し社会常識を身につけてほしい」と訴える水沢さんは、「せめて校長先生が先生方に呼びかけてほしい」と加える。
「先生方は、校長先生のおっしゃることは守るんです。『物は大切にしましょう』『壊したらすぐ言いましょう』と呼びかけていただきたいですね。先生方も、児童にはこう指導しているはずなのですが」
学期途中の予算申請、提出期限の超過…事務職員を軽視の現実
時間に対するコスト意識にも、疑問を持つ。
「話せば相互理解が深まると考えているのかもしれませんが、会議の1つの話題が非常に長いんです。例えば、『夏休みに何を持ち帰らせるか』を学年ごとに1つずつ挙げていって何十分もかかるので、私は職員会議への出席は最小限にしています」
会議ならともかく、職員室での“おしゃべり”も目立つという。児童やその家庭事情に関する話題もあるが、個人情報を声高に交換するのはコンプライアンス上もいささか問題だろう。
こうした意識は事務処理にも表れる。例えば経費精算では、移動は基本的に公共交通機関のみなのに、「タクシー乗っちゃったんだよね」と後から報告されることもあると水沢さんは明かす。
「午前に出勤して午後に有給休暇を取った場合、公務員は帰路の旅費が出ないのですが、何度教えても帰路分を請求してきます。そして二言目には『私たち教員は金勘定が苦手だから』、です。もちろん、修正には手間もかかります」
小学校の教員は算数を教えるのだから、計算に弱いわけがない。「『まあ事務が何とかするだろう』と、事務職員を召使いか何かだと思っているのかも」と水沢さんはため息をつく。
「書類の提出期限は全く守ってくれません。期日前に再三伝えても効果はありません。ほかの教員と雑談をしていたので呼びかけると、『ちょっと今忙しくて……』と逃げられてしまうことも。『一緒にやってあげるから、今やりましょうか』と何度も声をかけてやっと提出してもらっています」
他方で、遠慮なく要望を突きつけてくるあたり“召使い扱い”が透けて見える。学校では予算編成を4月に行い、それ以降は動かせないにもかかわらず、随時消耗品や備品の購入に口を出したり、セミナー・講演会など費用がかかる企画を持ち込んだりする。
「『授業で使うので』と急に言われたり、当初は不要だと言っていた備品をやはりほしいと言われるのは日常茶飯事です。突然外部講師を招聘して、謝礼金の用意を求められることもあります。おそらく先生方は、直前にならないと何が必要かわかるわけがないと思っているでしょう。でも、区が学校におろす予算は決まってるし、使い途は4月に決めているので、急な変更は簡単なことではないんです」
もちろん水沢さんも、「子どもたちのために」と思えばこそ何とか奔走している。日々児童と向き合う教員が目先しか見えないのも理解できる。ところが、水沢さんの勤務してきた学校では、校長や副校長も同様に近視眼的になっているという。