確かに、国の一般会計の基礎的財政収支は、中長期試算の成長実現ケースによると、毎年度徐々に改善してゆき、2030年度には0.3兆円の黒字になる(ちなみに、目下の財政健全化目標は国だけでなく地方自治体の分も含んだ基礎的財政収支で、これを2025年度に黒字化することを目標としている)。
基礎的財政収支が改善しているのに、公債依存度が悪化するというのはどういうことか。
その差異の原因は、利払い費の増大である。基礎的財政収支の支出側は、政策的経費であって、利払い費は含まれない。だから、利払い費が増えても、基礎的財政収支が直ちに悪化するというわけではない。
しかし、公債依存度の分母は、利払い費を含む歳出総額である。
利払い費が増えることで歳出総額が増えると、利払い費が増えるほどには税収が増えなければ、国債発行を増やさないと収支の帳尻が合わず、結果として公債依存度が上昇することになる。デフレから脱却して物価上昇率が安定して2%近傍になれば、当然として国債金利も上昇する。それに伴い、利払い費も増加する。
ツケ回しのコスト=利払い費が増加
この利払い費は、これまで今を生きる世代が負うべき税負担を回避して発行してきた国債に伴う費用である。いわば後代にツケを回したことに伴うコストである。それすら払わないということでは、無責任極まりない。
そのコストをも含んだうえで、できるだけ後代にツケ回さないように、公債依存度を引き下げてゆく必要がある。無駄な財政支出を削減することを通じて国債発行を減らすことで、公債依存度は下げられる。
中長期試算では、今の財政構造のままでも25%を割らない程度には公債依存度が下がるとの見通しであるから、無駄な財政支出を削減するという規律付けのためには、もう一段の引き下げ、例えば20%程度まで公債依存度を下げるような政策努力が必要だ。
そうすることで、後代へのツケ回しを和らげることができる。
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