コロナ後の立ち飲み屋に「若い女性」が増えた理由 イマドキの女性&若者の心理を突いた戦略

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立ち飲み店は中を見せて、定食店は中を見せないという点でアプローチは違いますが、女性が快適に利用できるようにするにはどうするかという点で目の付け所は同じです。どちらの場合でも女性のニーズをとらえ、隙間を埋めるための工夫が凝らされています。

また、経営者の視点から見ても、立ち飲み屋は魅力的な業態といえます。立ち飲み形式の店舗は小規模な経営を行うことができるため、開業コストや家賃を抑えることができます。さらに立ち飲みであるため長居する客が少なく、回転率が高いこともメリットです。ドリンクやフードはもちろん、内装やコンセプトにもこだわることで、常連客を作ることができる可能性も高くなります。

アフターコロナの心の隙間も埋める立ち飲み屋

コロナ禍をきっかけにリモートワークや在宅勤務が増えたことで、通勤などの負担が減りました。その一方で対面のコミュニケーションが減り、自粛推奨の期間を通じて誰かと空気や雰囲気を共有したいという願望が蓄積されました。

コロナ禍では自宅でビデオ通話をしながら食事やお酒を楽しむオンライン飲み会が行われることもありましたが、こうしたリモートでの飲み会に対してつまらなさや不満を感じた人は多いのではないでしょうか。

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コロナ禍が一段落したとき、その気持ちの受け皿となる場が求められました。立ち飲み屋は前述のとおり気軽に仲間を誘えます。店員や、たまたま居合わせた人との距離が近く、飲みながら仲良くなることもあります。さらに座らずに立ったまま飲むため席の移動が容易であり、気になる人と近くで話す機会が増えます。

立ち飲み屋についての調査でも、利用する目的の1位は「1人で気楽に飲みたいとき」(53%)ですが、2位は「(職場以外の)友人と飲みたいとき」(38%)、3位に「帰宅途中に上司や同僚と飲みたいとき」(36%)が挙がっています。

つまり立ち飲み屋は人と直接話し、リアルにつながることに飢えていた人たちの需要に応え、心の隙間を埋めているため、多くの人が集まるのです。人間は基本的に社会的な生き物であり、他者とつながりをもちたいという欲求は普遍的なものです。こうした普遍的欲求に対するビジネスは、一時的なブームではなく長期的なトレンドになることができる可能性があります。

ふとした瞬間に感じる心の隙間は、あなただけではなくほかの人も同様に感じているかもしれません。そうしたニーズを適切にとらえ、隙間を埋めるための商品やサービスを作り出すことができれば、大きなビジネスチャンスになるのではないでしょうか。

菅原 由一 税理士

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すがわら ゆういち / Yuichi Sugawara

1975年三重県生まれ。税理士。東京・名古屋・大阪・三重に拠点を置き、中小企業の資金繰りコンサルタントとして活躍。銀行が絶賛する独自資料の作成で赤字会社も含め融資実行率は95%以上。顧問先の黒字企業割合は85%を実現している。これまで 700 本以上のセミナー講師を務め、7000 名超の経営者が受講し、TV、専門誌、新聞、各メディアからの取材も多く、大手企業からの講演依頼も多数。YouTubeチャンネル『脱・税理士スガワラくん』は開設わずか6か月で登録者数13万人を突破する。


 

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