コロナ後の立ち飲み屋に「若い女性」が増えた理由 イマドキの女性&若者の心理を突いた戦略

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立ち飲み屋のような、自宅でも職場でもない、居心地の良い3番目の居場所を「サードプレイス」といいます。

時間を持て余したときだけではなく、仕事でドッと疲れたり落ち込んだりしたときにも、立ち飲み屋で少し飲むことで気持ちをリフレッシュさせ、すっきりした状態で帰宅することができるようになるのです。

ちなみに、スターバックスはこのサードプレイスというコンセプトを追究していたことは有名な話です。

立ち飲み屋の繁盛と関連する社会変化として、タイパも影響しています。タイパはタイムパフォーマンスの略語で、時間効率の良し悪しを表す言葉です。コスパ(コストパフォーマンス)の時間版として若い人たちを中心に重視されるようになった新しい価値基準で、三省堂が発表する2022年の「今年の新語」では大賞になりました。

タイパを重視する行動としては、例えば、映画や動画を倍速で見る、音楽のサビだけを聴く、まとめサイトでニュースを読むなどがあります。このような行動が広がるのは「時間を無駄にしたくない」という気持ちの表れです。

すなわち、娯楽や消費活動の選択肢が多様に存在している現代においては、すべての人に平等に与えられている「時間」の価値が高まっているといえるでしょう。

その点から見ると、立ち飲み屋はタイパに優れているといえます。まず、注文してすぐにドリンクとフードが出てきます。予約する必要もなく、入りたいときにフラッと入ることができます。滞在時間も1〜2時間ほどで、短時間で飲み、楽しむことができるのです。「サクッと飲んで帰りたい」という人たちの心の隙間を埋めていることがわかりますね。

1人で気軽に入れることも、立ち飲み屋のメリットといえるでしょう。賑やかな居酒屋や高級そうなバーに1人で入るのは気が引けるという人でも、程よい喧騒の中で飲みたいと思うことはあるのではないでしょうか。立ち飲み屋ではフラッと立ち寄ってサクッと飲めるため、そうした1人のお客さんでも気兼ねなく飲みに行くことができます。

また、短時間で飲めるため飲み相手を誘いやすくなります。長時間拘束されることへの懸念から飲みニケーションを避けがちな若い人たちも、「1時間くらいなら行ってみよう」と思うでしょう。

立ち飲み屋に女性が多い意外な理由

立ち飲み屋に女性が多いのも誘いやすいためです。元来、立ち飲み屋は、女性にとって入りづらい場所の代表でした。しかし、立ち飲み屋を見ると女性もいますし、女性が来店しやすい店づくりを意識して、ワインや洋酒を提供する欧風スタイルのバルのような立ち飲み屋なども増えています。

女性が入りやすいという点でもう1つ重要なのは、店内の様子が外から見えることです。どんなお客さんがいて、どんな店員がいて、どんな内装なのかが外から確認できることで、女性は安心して店に入ることができるのです。

ちなみに、このアプローチは定食チェーンの大戸屋と逆です。大戸屋は地下や2階に店舗があることが多く、店内の様子が見えづらいのが特徴です。女性は1人で入っていくところや1人で食べている様子を見られたり、料理をしない人だと思われたりすることを嫌がる傾向があります。そういう不安を、外から見えない店づくりによって解消しているわけです。

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