「安全になると不安が増す」パラドックスの理由 災害、事件、事故による死者数は減少トレンド

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このように、地震以外の自然災害や交通事故・殺人事件による死亡者数は激減し、主要国では最少レベルになっています。統計から判断する限り、「安全神話が崩壊した」どころか、世界で最も安全な社会が実現したと言えるでしょう。

安全になると不安が増す?

国民が安全に暮らせるようになったことは、平均寿命が84.3歳(2022年)と世界最長になった=国民が健康になったことと並んで、戦後の日本が世界でもまれな成功を収めた証しです。

ところが、多くの日本人が安全を実感できておらず、不安を感じているようです。自然災害・交通事故・殺人事件が起こると、ネット掲示板やSNSでは「安全な暮らしが失われた」「物騒な世の中になった」といった声が上がります。また、各種の国際比較調査からも、日本人は不安感が高く、幸福感が低いことが明らかになっています。

まず確認したいのが、安全と安心の違い。私たちは、「安全・安心」とひとくくりにしますが、別物です。「安全」は物理的に危険が少ない状態、「安心」は心理的に危険を感じない状態です。

日本では1960年代に立ち上がった警備業の市場が急拡大しています。主要な警備業界の売上高は、昭和の時代まで2兆円足らずでしたが、最近は3.5兆円に上っています(警察庁「警備業の概況」)。

セコムやALSOKといった警備業者は、警察と違って犯罪者を捕まえるわけではないので、直接的には「安全」を提供していません。「見守ってくれていると安心」ということで、「安心」を主に提供しています。

安心を提供する警備業が隆盛しているというトレンドから、日本では、社会がどんどん安全になっているのに、逆に国民の不安が増していると見ることができます。

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