「不適切にもほどがある!」世代で生じる"温度差" 昭和世代からは共感も、Z世代にはファンタジー

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もう1つの気になる点は、後半の昭和おやじ・市郎が令和社会へ物申すシーンへの世代間ギャップだ。

それぞれのテーマである第1話の「ハラスメント」も、第2話の「働き方改革」も、それ自体が間違っていることではなく、平成世代にとってはふつうのこと。

ドラマは、そもそも昭和を生きてきた人の視点だ。令和社会の建前的であったり、過剰にコンプラが唱えられている部分への主張は、平成世代にも通じるかもしれないが、昭和世代が肌で感じる窮屈さや不自由さは、世代によって感じ方、受け止め方が異なるだろう。

市郎の問いかけが、昭和世代の心を熱く揺さぶっても、Z世代には「そう言われてみればそうかもしれない」くらいの温度感かもしれない。なかには重箱の隅をつつくような揚げ足取りのように感じたり、違和感を持ったりして、ドラマの主張に共感できない人もいるかもしれない。

しかし、本作が伝えようとするのは、戦後から現代社会の礎を築いてきた昭和人の視点を通すと、当たり前になっている現代社会の常識には、それでいいの?と疑問に感じる点もあるということだ。

昭和を知らない世代に、昭和がどんな時代だったか知ってもらい、その時代を生きてきた人たちから見た令和社会への疑問から、気づきを得てほしい。いまの社会が当たり前ではないという視点も持ってもらいたい。そんなメッセージが、込められているのではないだろうか。

ミュージカル調で、笑いながら楽しめる

本作は、それを社会派ドラマではなく、エンターテインメントとして笑いながら楽しめるドラマに昇華している。そのためのミュージカル調なのだろう。

昭和の暑苦しい人たちにとって、なんでもコスパの令和社会はおかしいけれど、それを言っている昭和人こそ、平成・令和人から見るとおかしい。

お互いに笑いながら理解を深めることで、生きづらい思いをしている人が少しでも楽になる社会になってほしい。そんなことを伝えている気がする。

ゆえに、本作を見た世代による温度差は、生じるべくして生じたものであり、そのギャップから気づきを得ることこそ、このドラマの意義につながる。

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