戦時でも「ダイヤどおり運行」ウクライナ鉄道の今 周辺諸国との重要な足、ウィーン直通の客車も

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台車の交換作業はウクライナの国境駅・チョープで行われている。原氏は「車両2両をジャッキで持ち上げて、台車を2時間半かけて付け替える」とその様子を語ってくれた。なお、ウィーン―チョープ間には標準軌車両による国際列車も運行されており、所要10時間弱、片道80ユーロ強(約1万3000円)でウクライナ領まで行くことができる。

ウクライナ鉄道 オーストリア直通国際列車
キーウ―ウィーン間を直通するウクライナ鉄道の客車(写真:原忠之)
キーウ・ウージュホロド間列車
キーウとスロバキア・ハンガリー国境の街ウージュホロドを結ぶ列車(写真:原忠之)

もともと穀物の一大輸出国であるウクライナだが、ロシアによる侵攻で黒海航路が一時使えなくなった。UZではそうした問題を解決し、より効率よく欧州諸国に物資を輸出するため、いわゆるフリーゲージトレイン(軌間可変車両)導入の検討を始めている。

ロシア支配地域以外は安定運行

では、ウクライナ国内の鉄道ネットワークは現状どうなっているのだろうか。

2024年1月末時点の戦況は、親ロシア派が多いとされる東部地域をロシア軍が支配しているものの、過去数カ月にわたって戦線は膠着状態にある。そんな中で東部地域への鉄道乗り入れは不可能なものの、ウクライナがロシア軍をドニプロ川の東岸に追いやってからは、東部の州ヘルソン、ザポリージャ、ハルキウへの列車も走るようになった。首都キーウを出入りする列車も1日80往復に達するなど、ロシア支配地域以外では鉄道運行が順調に行われている。

ウクライナ鉄道の主要運行ルート 2024年1月

ちなみに2014年にロシアが奪取したクリミア半島の鉄道事業は、ロシア本土と橋でつながったこともあり、ロシア国鉄(RZD)から独立した組織であるクリミア鉄道なる会社が運営している。

現在、戦況は膠着状態にあり、戦争の長期化が懸念されている。ロシアによる侵攻開始から2年、安心してウクライナの鉄道旅を楽しめるのはいつになるのだろうか。今はその日を心待ちにしたい。

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さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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