戦時でも「ダイヤどおり運行」ウクライナ鉄道の今 周辺諸国との重要な足、ウィーン直通の客車も
ウクライナは戦時下にあるため、民間航空機を国土の上空に飛ばすことができない。そこで、ウクライナ国鉄(UZ)は積極的に近隣諸国(敵国であるロシア、ベラルーシを除く)との国際鉄道網の復興に努めており、2ルートあるキーウとポーランドの間をはじめ、ハンガリー経由でオーストリアへの直通列車も運行されるようになった。
周辺国からキーウや西部の主要都市であるリビウ(Lviv)へ向かう人々が多い中、ウクライナへの鉄道アクセスのハブとなっているのは、開戦当時から一貫してポーランド東部のプシェミシル(Przemysl)だ。ここからキーウへ向かう鉄道ルートは、岸田首相が2023年3月にキーウを電撃訪問した際も使われた。「王道ルート」のプシェミシル経由だが、列車の本数が比較的多いにもかかわらず切符は早めに売り切れてしまうといい、スロバキアとハンガリーと接するチョープ(Chop)経由で出入りするルートも使われている。
定刻通り走るキーウ行き長距離列車
筆者は2022年の開戦後ほどなくしてプシェミシルを訪れたが、当時は国際列車の本数も少なく、ウクライナから着の身着のまま逃げてきた多数の人々で混乱していた。今ではむしろ、ポーランドからウクライナへ戻る人々の需要が増えており、プシェミシルからはキーウだけでなく、南部の黒海沿岸の街オデーサや、ロシア国境に近い北東部ハルキウ方面への直通列車も運行されている。
プシェミシルを午後2時前に出発する列車はキーウまで16時間弱かけて走る。一時は空爆の影響で鉄道のダイヤが乱れることもあったが、最近では意外なほど正確に運行されており、原氏が乗った列車はダイヤ通り運行し、キーウへは定刻通り翌朝5時1分に到着したという。戦時下の首都へ行く緊張とは裏腹に、プシェミシルで乗り込んだUZの青い車両は「ふわふわした台車とスチーム暖房が心地よく、短いレールの継ぎ目のリズムとともにとてもよく眠れた」と話してくれた。
UZの青い車両は、オーストリアの首都ウィーンまで直通している。ただ、西欧・東欧諸国は標準軌(1435mm)、ウクライナを含む旧ソ連諸国は広軌(1524mm、5フィート軌間とも)で軌間が異なる。国境の前後では軌間の違いを解決すべく、複数のレールを敷いて相互の行き来が可能となっているが、オーストリアまで車両を直通させるには台車を交換しなければならない。
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