戦時でも「ダイヤどおり運行」ウクライナ鉄道の今 周辺諸国との重要な足、ウィーン直通の客車も
ロシア軍は侵攻開始からほどなく、キーウの至近距離まで進軍。郊外の高級住宅地ブチャでは市民数百人が虐殺される事態となったほか、ショッピングセンターが攻撃され焼失するといったことも起きた。当時の映像で見る状況はあまりにも凄惨だ。
原氏はこうした状況の中、「キーウがロシアによる軍事行為によって被害を受けており、今もなお、訪問するには危険があることは事実だ」としながらも、「キーウの都市機能は十分回復しているとの見方もできる」と説明。「結論としては、双方がどちらも真実」だという。虐殺が起きたブチャでさえも「現地の人々によると、高級リゾートの雰囲気がありながらも、キーウ中心部まで通勤圏なので変わらぬ人気がある」(原氏)といい、復興も進んでいることをうかがわせる。
地下鉄は防空警報下でも運行
キーウ中心部の広場には、破壊されたロシア軍の戦車と装甲車両が並ぶその横に、爆撃で穴だらけになった客車1両が展示されている。記念撮影する人々も多く観光名所のような雰囲気も感じられるが、その近くにはロシアとの戦いで命を落とした軍人や市民を慰霊する一角もあり、「ロシアの一方的な残虐行為が続いていることが否応なしに思い出される」(原氏)。
年末年始もロシアはウクライナ各地に300発近いミサイルと200機以上のドローン(無人機)による大規模攻撃を展開した。キーウも被害を受けたが、原氏は「パトリオット防空システムなど、西側諸国から導入されたシステムによってキーウが十分に保護されていると市民は確信しているように見える」という。
キーウを走る地下鉄は全面的に防空壕と化したことがあったが、現在は市民の足として復活しており、防空警報が出ても途切れることなく運行。原氏は「地下鉄駅にいるとスマートフォンを通じて地上の様子をチェックする人も多い」と実体験を語る。
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