とはいえ、電子媒体なりの問題点もあります。
まず、ディスクをセットするのにひと手間かかるので、見る機会が減ってしまうこと。私も「社史フェア2015」の準備という機会があったから閲覧したものが多かったです。ディスクをセットしても、電子版の社史や動画に何が収録されているのかは、根気よく見ていかないとわからないことが多いので、結局、全体像がつかめないまま閲覧を終えてしまうこともあるでしょう。この点は、手に取って、その場でパラパラめくれる書籍のほうが簡便だと思います。
社史は非売品が大半なので、贈呈や配布などでのやりとりが中心になりますが、電子媒体だけだとありがたみが薄いので、書籍での刊行にこだわったという声も耳にします。取引先や図書館等には冊子&電子媒体のセットで贈呈や寄贈をし、社員等には電子媒体で配布するなど、渡す相手によって媒体を変えている企業もあるようです。
再生環境にも注意
再生環境にも注意が必要です。説明文にCPUの性能はいくつ以上のWindows何を推奨などと書かれていますが、10年後のPC等で閲覧できるとは限らないという問題も生じます。当館が所蔵する社史の付録には、Windows3.1対応と書かれているCD-ROMや、VHSビデオ、ソノシートなどもありますが、現在、閲覧や視聴をするのが困難になっていると思います。
また、DVDには、PC用(DVD-ROM)とビデオ用 (DVD-Video)があります。2014年に刊行されたイハラケミカル工業の『イハラの挑戦 50年の軌跡』にはDVDデータディスクとDVDビデオディスクの二枚がケースに収められていました。内容は会社の歴史をまとめた約11分間の映像と変わらないので、どちらでも見られるようにした配慮でしょう。ちなみに『イハラの挑戦 50年の軌跡』は、当館に寄贈していただいた2014年刊行の社史(現時点で約200点)の中で、唯一、書籍と併せてではなく、電子媒体のみで刊行されたものです(簡単な沿革リーフレットはケースに入っています)。
なお、電子媒体の社史の場合、貸出は禁止などの条件がついているものも多いので、図書館等でのご利用の際には、事前に問い合わせをしたほうがよいと思います。
このほかに、社史の全文や、社史の内容を加工したものをインターネットで公開している企業もあると思いますが、その場合、図書館には情報が入りにくいので、今回は取りあげませんでした。私は知らないのですが、タブレットにダウンロードできる電子ブックの社史もあるのかもしれません。
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