マンション高齢化に潜む"見えない"配管のリスク 負担増を避けたい、まずは「知る」ことから

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先ほど「給排水管の寿命は約35~40年」とご紹介した。この数字を聞いてお気づきになった方もいるかもしれないが、実は3回目の大規模修繕工事の周期と重なっているのだ。

大規模修繕工事の3回目といえば、マンションの経年劣化がより目立ち始める時期でもある。給排水管だけでなく、サッシやドア、電気系統までさまざまな部分について改修を検討しなければならない。

事前に行う劣化診断でも「給排水管」の劣化が認められ、「2、3年以内に改修が必要」との報告が管理会社から上がってくるケースが多い。長期修繕計画上も赤字で余裕がないうえ、その他の箇所も改修しなければならないとなると、どのように優先順位をつけるべきか管理組合としても思案どころだ。

さらに、給排水管に関しては、共有部分だけでなく専有部分も関係している。マンション全体の劣化状況を判断し工事を進めるためには、専有部分である住戸内の共用配管を確認し、見積もりを作成する必要があるためだ。

例えば排水竪管を確認するためには、専有部に入り、壁を壊して開口しなければならないこともある。居住者にとって負担も大きく、丁寧な合意形成が求められる。また専有部分の状況によっては、具体的な見積もり後にも予備費を設けておく必要もある。

大規模修繕ありきの工事を見直すべき

専門的すぎて工事の妥当性の判断、費用負担などが難しい場合には、専門のコンサルタントに橋渡しを依頼するのも一案だ。公平性を持ってしっかりとジャッジメントしていくために、専門知識の通訳ともいうべき、第三者のコンサルタントの力を借りるメリットは大きい。

理事会での検討時間も短縮でき、適切な時期に必要な工事が行えることが、ひいては修繕積立金の不足を解消することにもつながっていく。

実際、さくら事務所で相談を受けたケースでは住戸の浴槽下に配管があり、現在使用しているタイル張りの浴槽を壊さなければ、竪管(縦方向の配管)が交換できないということがあった。

このケースではユニットバスに変えることで漏水リスクが少なくなる旨を説明し、段階を踏んで居住者の合意を得ることができた。管理組合の漏水対応もなくなり、保険料が上がるリスクを低減できるなどトータルでコストダウンを実現できた。

建設業界では人材不足も課題となっている。

特に給排水工事に関しては職人不足が深刻で、配管工事を引き受ける設備会社そのものも減ってきている。このような厳しい背景の中、配管の素材が何でできているか、劣化の現状を確認し、修繕計画を見直さなくてはならない。

「大規模修繕工事で予定されている」という理由で何となく工事を行えば、必要のない工事を行い、費用負担が増えるリスクもある。マンションによって劣化状況も異なり、配管に使用する材質も異なる。

どのような範囲で工事するのか、あらかじめ施工会社としっかりと話をしたうえで計画を作っていくことが大切になる。

長嶋 修 不動産コンサルタント(さくら事務所 会長)

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ながしま おさむ / Osamu Nagashima

1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社『株式会社さくら事務所』を設立、現会長。以降、さまざまな活動を通して“第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”第一人者としての地位を築いた。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任している。主な著書に、『マイホームはこうして選びなさい』(ダイヤモンド社)、『「マイホームの常識」にだまされるな!知らないと損する新常識80』(朝日新聞出版)、『これから3年不動産とどう付き合うか』(日本経済新聞出版社)、『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ社)など。さくら事務所公式HPはこちら
 

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