フープス:ワシントンに積極的にかかわることは当然重要です。でも実はワシントンって、やっぱり特殊な街なんですよ。永田町の常識は日本の一般の人の常識と違うように。だからIT企業などの新興企業は、つねにワシントンともめています。米国の会社だからといって、必ずしもみんなうまくパブリック・アフェアーズができているわけでもない。米国国内でも、ワシントンへの対応は慣れているところと慣れていないところがあります。場合によってはシリコンバレーの企業のほうが、日系企業より後れをとっているかもしれませんよ。
桑島:それは初めて聞きました。
フープス:どこの国でも、その国の政治家とか政策決定者との付き合いを考えるのは難しいことですから。やはりパブリック・アフェアーズに関しては、”Be a good student and a good learner.”ということが言えますね。
桑島:よい生徒になり、よく学んで政治を取り巻く環境を理解する、ということでしょうか。
フープス:そのとおりです。それと同時に大事なのが、タイミングを逃さないことです。何かあったらすぐワシントンに来なければいけない。政策形成に携わるタイミングを逃すと、フォロワーの地位に甘んじることになります。
桑島:スピードが大事なんでしょうね。後れをとらないこと。人よりも先んじて、ワシントンに来い、ということですね。
従来の閉鎖性だけでなく各種メディアの開放性も必要
フープス:やっぱりワシントンとのかかわり方が、企業の競争力にダイレクトにつながりますから。でも最近は、ロビイングさえしていればいいというわけでもないんですよ。つまり、ロビイングとパブリック・アフェアーズは違うわけです。
桑島:どういうことでしょうか。
フープス:日本で言うと、これからは霞が関だけ相手にしていてはダメだということです。議員とか議会だけでなく、いかにソーシャルメディアで声を増幅させたり、各種メディアを使ったり、草の根運動を繰り広げたりして、いろんなツールを使ってオープンに世論を形成していく必要があります。
桑島:ワシントンにおけるロビイングも、やっぱり永田町と同じく、パーティーで一緒にワインを飲んだりして関係を深めることも大事ですよね。だけどトレンドは、そうじゃないということですか。
フープス:伝統的なロビイングには閉鎖的なところがありましたが、近年はインターネットの発達で、外界に対する開放性が強まってきています。ソーシャルメディアはその典型です。これらの開放性と閉鎖性をうまく組み合わせる必要があるでしょう。
桑島:そうですね。これは日本も同じで、そういう方向に向かっていかなければいけないでしょう。政策決定の過程において、ステークホルダーがますます多様化している中、閉じた世界で限られた関係者が話して決めるのではなく、ますます意思決定のプロセスが透明化するトレンドにあるということ。そして、グローバル化とテクノロジーの発達がますますそのトレンドを強めているということでしょうか。その波は日本でも今後ますます強まっていくと思います。最終回にふさわしい、示唆に富むコメントをいただきました。今日は本当にありがとうございました。
(構成:長山清子)
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